本年度は、本研究を締めくくる年として、研究実施計画に沿って資料収集・解析を進めるとともに、関連団体や研究者、実務家を対象にヒヤリング調査を実施した。具体的には、反対家庭暴力網絡(李塋氏)、中華女子学院(劉明輝氏)、北京市佑天律士事務所(範暁紅氏)、全国婦聯(劉伯紅)、中国社会科学院(薛寧蘭氏)、婦女新知基金会(陳昭如氏・官暁薇氏)、国立政治大学(陳恵馨氏)、台北市女性権益促進会と台湾婦女展業協会、そして亜細亜女性法学研究所(ソウル大学、パク・ウンジョン氏)などに訪問し、各国の女性団体の実態、ジェンダー法政策の取組・実施状況、課題等について資料収集とインタビューを行った。台湾や韓国の政府から独立した民間女性団体に比べて、中国のそれは婦聯という政府組織の存在ゆえに、その法的・政治的地位は非常に不安定(制度的に地位取得が困難)で、婦聯と微妙な距離と緊張関係を保ちながら女性問題に取り組んでいることが分かった。それは中国の権威主義体制に由来し、それが維持される限り、民間団体の存続は常に脅かされるだろうし、婦聯は政府組織として国家利益を優先せざるを得ない法的・政治的状況の中で、その役割を十分に発揮できないまま周縁化され続けよう。こうした女性と団体と国家との三者関係から中国のジェンダー秩序のあり方を再確認できた。また上記のフィールドワークを進める一方で、比較法学会とジェンダー法学会、日韓次世代学術フォーラム、神奈川大学主催のDV法研究会などに参加し、貴重な知見が得られ、本研究における今後の方向性の定めに有益なヒントを受けることができた。そして9月6日に北海道大学で開かれた現代中国法研究会で研究発表を行い、参加者から有意義なコメントをいただいた。その成果を平成26年度の北大法学論集に公表する予定である。
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