今年度は、①東日本大震災後の自閉症スペクトラム児者の実態や支援ニーズを把握するためのインタビュー調査、②被災した自閉症スペクトラム児者家族を対象としたアンケート調査を実施した。 ①では、福島県内居住者13名(うち避難者5名)、県外避難者4名(うち自主避難者3名)、新潟県中越及び中越沖地震を被災した家族5名、計22名へのインタビューを行った。福島県の避難者は、特に震災1ヶ月後に症状や行動の悪化が見られた。県外への自主避難者は、余震による不安や原発事故による生活の制限によって状態が悪化していたこと、親の放射能に対する不安が強いこと、障がい特性理解や支援体制が整っている地域からの受け入れがあったことが、自主避難を決意した背景と考えられた。新潟県では家屋倒壊の被害が多く、夜は車中や避難所に泊まり、日中は自宅に戻るという形の避難をしていた。それぞれの家族は、混乱の中にあっても子どもに元の生活に近い環境を提供する工夫や努力をしていた。 ②のアンケートでは、102名(うち避難経験者44名)の回答を得た。その結果、避難した場合に震災後1~6ヶ月後に全般的な状態の悪化が見られ、特にコミュニケーション、自傷行為、パニック、退行、睡眠の症状が悪化していた。症状悪化の個人特性として、9歳までの幼児・児童であることが挙げられた。在籍した学級種の違いやSCQ(対人コミュニケーション質問紙)による評価、福祉サービスの有無等の要因と、症状悪化や回復との関連は見い出せなかった。親へのSRS-18(心理的ストレス反応測定尺度)の結果では、避難しなかった親より避難した親の「不機嫌・怒り」が高く、福祉サービス提供のあった親より提供のなかった親の「無気力」が高かった。約7割の親が「子どもの慣れ親しんでいる、地域の特別支援学級や支援学校、福祉施設を福祉避難所として確保して欲しい」と希望した。 以上の結果を踏まえ、支援体制や内容を検討した。
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