本研究の大目的は経済成長・格差と経済活動の地理的分布の相互依存関係の解明である。当初計画していた2つのプロジェクトに加えて、新プロジェクトを実施した。第一に、産業の異質性を考慮した都市規模分布の動学的一般均衡モデルを構築し、産業の異質性と都市規模分布の関係について分析を行い、都市規模分布は産業の異質性に大きく依存しないことを明らかにした。研究成果は日本経済学会で報告した。 第二に、比較優位とスキル・プレミアムの相互依存関係について分析を行った。具体的には、能力が異なる多数の起業家からなる2地域モデルを構築し、事前に同質的な2地域がそれぞれ知識集約的な生産プロセス、労働集約的な生産プロセスに特化することを示した。都市への経済活動の集中は生産コストや地価等の生活費を押し上げ、生産性の高い起業家かしか立地せず、したがってそのような地域で生産される良質な財・サービスが地域の競争力を高め、さらに経済活動が集中する、という循環を特定し、その結果スキル・プレミアムが生じることを明らかにしたのが本研究の貢献である。研究成果は東京大学、京都大学、イタリアAccademiaCusanoで開催されたワークショップで報告した。 第三に、task tradeと都市規模分布の研究を新しくスタートさせた。都市には本社機能や研究開発部門といったスキルや知識を必要とするタスクが集中している一方で、地方では定型化された生産工程に基づく生産ラインでの労働や支店経済が特徴的であるが、このような地域間のタスクへの特化と都市規模分布の関係を理論的・実証的に明らかにするのが本研究の目的である。その重要性にも関わらず先行研究がないことから、学術的にも重要な貢献となる。現在、理論分析を完了しているところである。
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