本研究の目的は経済成長・格差と経済活動の地理的分布の相互依存関係の解明である。平成25年度は平成24年度に行っていた2つのプロジェクトに加えて、新プロジェクトに取り組んだ。 第一に、比較優位とスキル・プレミアムの相互依存関係についての分析を引き続き行った。能力が異なる起業家が存在する2地域モデルを構築し、同質的な2地域がそれぞれ知識集約的な生産プロセス、労働集約的な生産プロセスに特化することを示したのが本研究の貢献である。研究成果は英文雑誌であるEconomics Bulletin第33巻3号に掲載された。 第二に、task tradeと都市規模分布の研究を引き続き行った。多数の地域間で生産プロセスにおける機能や業務の分業が生じる結果都市規模分布が出現するモデルを構築し、米国のデータを用いてパラメータを測定することで、都市規模分布をtask tradeという視点から数量的分析したことが本研究の貢献である。国内外の3つの学会で研究報告を行った。 第三に、新しい研究プロジェクトとして、本社・研究開発・生産機能等の地域間分業が都市の階層性にもたらす含意についての研究を行った。従来、都市の階層性の議論は研究開発や本社機能と生産機能が統合された企業組織を前提として議論されてきた。しかし近年、国際貿易や都市経済学の先行研究が指摘するように、情報通信技術の発達により本社機能と生産機能の分離が進み、各地域・都市間で機能的特化の特徴が強く出るようになってきている。本研究はこのような現代の経済情勢の変化が伝統的都市経済学的テーマである都市の階層性にどのような影響を与えるかを検討している点で文献に貢献している。財・サービスの輸送費があり、多数の地域・産業があるような一般的なモデルをモンテカルロ・シミュレーションといった数値計算の手法を用いて理論的に分析する手法についても検討した。国内で開催された3つのワークショップで研究報告を行った。
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