本研究では、日本の中等教育における学校教育と不平等の現状を実証的に明らかにするとともに、それを他国と比較したときの日本的特徴を、教育制度の違いに焦点を当てながら検討した。具体的には、前期中等教育段階の生徒を対象にしたTIMSSデータ、後期中等教育段階の生徒を対象としたPISAデータといくつかの高校生調査データ、およびその後の地位達成を含めて検討することができる就業構造基本調査の匿名データを用いて分析をおこなった。 本研究で得られた知見は大きく以下の二点である。①日本では高校より前の段階において、学校間での学力の階層差は小さいが、中学校段階では私立中学の存在がそれを拡大する可能性が示唆された。②日本における教育機会の不平等が埋め込まれている制度的なコンテクストとして、学校と職業との結びつきが弱いにもかかわらず、それが学力に基づいて強く階層化されている点が重要であることが分かった。1点目については学会にて報告をおこない、2点目は理論的な整理とPISAを用いて他国と比較をおこなった箇所を中心に著書(近刊)としてまとめることができた。 また、②で述べたように職業との結びつきが弱いことが、日本の学校の重要な特徴の1つであるが、このような観点からは、専修学校専門課程(専門学校)を例外的に職業的レリヴァンスの強い教育機関として位置付けることができる。この例外的な位置づけの専門学校に通う生徒の特徴を検討することで、逆説的に日本的特徴を明らかにするという狙いのもとに、専門学校進学者の特徴に関する学会報告、報告書論文の執筆をおこなった。この分野の研究は現状では少ないため、今後も継続して検討していく予定である。
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