研究課題/領域番号 |
24830031
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
福富 満久 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (90636557)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 国際政治 / 平和構築 / 国際協力 / 民族紛争 |
研究概要 |
2012年12月15‐25日、イギリス、北アイルランドに出張した。 アイルランド地方では、英国統治から脱するアイルランド独立戦争後、1921年の英愛条約締結によりアイルランド自由国(後のアイルランド共和国)が成立した。以後、北アイルランドのイギリスとの統合維持派(ユニオニスト)とアイルランドへの帰属を望む共和国一派(レプュブリカン)が対立、これがアイルランド独立闘争(対英テロ闘争)に発展した。 北アイルランド独立闘争を率いたのが、武装組織であるアイルランド共和軍(IRA) で、今回はこのIRAと北アイルランドの現在の情勢について重点的に調査を行った。また、カトリック住民とプロテスタント住民の居住区およびシン・フェイン党本部を視察し情勢を把握できた。また元シン・フェイン党幹部へのインタビューに成功し、闘争激化していた頃の時代について詳しく聞くことができた。またテロで犠牲となった慰霊碑なども視察した。 ロンドンでは北アイルランド紛争に関しての資料収集、またノッティンガムのノッティンガム大学のシモン・マクグラス教授とグローバリゼーションの中の北アイルランド情勢について意見交換を行った。 2013年2月2日‐13日、民族紛争の根源とその解決を探るため東欧・バルカン地域に出張した。 ドイツがポーランドのワルシャワに建設した当時最大のユダヤ人ゲットー史跡を視察、また第二次世界大戦中に国家をあげて推進した人種差別的な抑圧政策により、人類史上最大の惨劇が生まれた強制収容所であるアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所、クラクフのユダヤ人ゲットー地区、シンドラー工場(メモリアル)、1999年のコソボ紛争におけるNATO軍の軍事介入(NATO軍空爆)を招いたベオグラード、ボスニア紛争跡地を視察した。また、ミュンヘンではアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のモデルとなったダッハウ強制収容所を視察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成24年度)は、Marc Weller、Barbara Metzger、Niall Johnson著 Settling Self-Determination Disputes: Complex Power-sharing in Theory and Practice (Publications on Ocean Development) Martinus Nijhoff; illustrated edition (2008/9/30)を読み込み、民族自決問題の解決について、複合型パワー・シェアリング(権力分有制度、Complex power sharing、以下CPSと略)が持続的発展と平和の基盤構築をどのように促し、民族間のトラブルをどのように解消しているのかについて考察し、CPSで分析された北アイルランド、ボスニア、コソボ、マケドニア、ガガウジア/モルドバ、南オセチア/グルジア、ブーゲンビル/パプア・ニューギニア、およびミンダナオ/フィリピンの8ヵ国のうち、北アイルランドとボスニアには渡航することができ現状を把握することができたため、一応おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Marc Weller、Barbara Metzger、Niall Johnson著 Settling Self-Determination Disputes: Complex Power-sharing in Theory and Practice (Publications on Ocean Development) Martinus Nijhoff; illustrated edition (2008/9/30)をさらに読み込み、これらの国で一体どの程度CPSの手法が取られたのか、どの程度和平に貢献したのか、共通項は何か、問題点は何か、について明らかにしていく。 また、ケンブリッジ・カーネギー・プロジェクトについて、制度創設の詳細や実施状況等を調査するため、カーネギー財団や欧州マイノリティ問題研究センター(ECMI)に赴き、CPSの詳細やこれまでの具体的成果及び評価を把握するとともに、同制度に関連する資料収集を行う。
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