IGF21計画に基づく天然ガスへの熱量変換によって気化製造設備を持つ事業者(LNGを直接購入する事業者)と持たない事業者(パイプラインから卸供給を受ける事業者)の2つのタイプに分かれたが、総括原価主義のため気化製造設備を持つ事業者のほうがガス小売価格は高くなった(内々価格差の存在)。これについて、第1段階として、経営組織が2つのタイプに分かれた原因について分析し、第2段階として、ガス小売価格の差(内々価格差)を生じさせている要因についてそれぞれ計量分析で検証した。 第1段階については、取引費用が経営組織を決定するという取引費用経済学の概念に基づき、長期と短期の不確実性、および立地特殊性が取引費用増加の原因であると仮定してProbitモデルを用いて検証した。 結果は、近郊に幹線パイプラインが通っている場合や卸事業者が存在するという立地特殊性がある場合は取引費用が減少するため、パイプラインを建設して直接天然ガスを購入する傾向があることがわかった。さらに、月間販売量の分散といった短期の不確実性が大きくなると取引費用が増大してLNG設備を保有する傾向がわかった。しかし、売上成長率のような長期の不確実性については取引費用増加の要因にはならないことがわかった。 第2段階については、ガス小売価格の決定要因として考えられる事業者の規模、TFP成長率、天然ガスの購入方法などを変数として組み込んで固定効果モデルによる計量分析を行った。 その結果として、事業者の境界の違いが規模の経済の違いを発生させ、それが小売価格に影響を与えていることがわかった。さらに、LNGの気化を各事業者が行うよりも卸元がまとめて気化して、それをパイプラインで各事業者が購入するほうが、ガスを安い価格で供給できることがわかった。
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