研究課題/領域番号 |
24830035
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
福榮 太郎 横浜国立大学, 保健管理センター, 講師 (10638034)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 認知機能障害 / MMSE / COGNISTAT / HDS-R / JART / 認知症 / うつ / せん妄 |
研究概要 |
本研究は,既存の認知機能検査をテストバッテリーとして複数使用し,認知症,せん妄,うつなどの認知機能障害の鑑別を目的としている。また認知症は,各種認知症の総称であり,一般的には四大認知症とされる,アルツハイマー型認知症,前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症,脳血管性認知症が挙げられる。これらの各認知症においても,症状として見られる認知機能障害にはそれぞれ相違があることが指摘されている。このため本研究では,認知症と非認知症であるせん妄,うつの鑑別を第一の目的とし,第二の目的として四大認知症の鑑別を目的とする。また本研究で用いる認知機能検査は臨床現場において,一般的に用いられているMMSE,HDS-R,COGNISTAT,JARTである。臨床現場における,これらの使用頻度の高い認知機能検査が,疾患の鑑別を補助できるようになることは,老年期医療において大きな意味を持つと考えられる。 これらの目的を達成するために本研究においては,一定程度の被験者の確保が課題となる。平成24年度の実績として,横浜市立みなと赤十字病院の協力を得,現段階において1200人強の被験者と,その結果を収集することができた。現在これらの結果を整理し,本研究のテストバッテリーの一つであるJARTと認知機能の低下に関して検討を行っている。この検討に関しては,第48回日本赤十字社医学会総会及び第25回日本総合病院精神医学会総会において発表を行った。また現在は医学的診断の整理などを同病院の医師と連絡を取りながら行っている。 今後は,新たな被験者を確保しつつ,本研究の目的である,認知所う,せん妄,うつの鑑別について検討を行い,その後四大認知症の鑑別について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では認知機能検査バッテリーの結果の取得と入力,その整理を行うことを目的に研究を進めてきた。また。認知機能障害は,その重篤度によって症候学的な状態が大きく変化するため,本研究の目的を遂行するためには相当数の事例を収集する必要があると考えられる。平成24年度において収集する事例数は1000事例を目標としていたが,現時点で1200強の事例を収集することができた。これらのことから,当初に設定した平成24年度の目標はある程度果たされていると考えられる。 ただ研究を進めていく中で,現在臨床現場で多く使われている認知機能検査そのものに関しても,一定程度の検討を行う必要が生じてきた。例えば,病前の推定IQを算出するJARTは,認知機能の低下に伴い,IQの値が低下してしまう現象が見られた。これらの指摘はこれまで我が国において,明確なエビデンスを持って提示されたことはない。そこで,本研究では,すでに使用されている認知機能検査の問題点なども精査しつつ,認知機能障害の鑑別について検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
すでに指摘したように本研究の大きな課題である事例数の確保は,現状では順調に行われている。そのため今後は認知機能検査の結果とせん妄,うつ,認知症の鑑別について検討を行い,その後四大認知症の鑑別に関して検討を行う予定である。しかし,事例数は一定程度確保できつつあるものの,本研究で対象としているいくつかの疾患においては,充分な患者数を確保できていない。そこでさらに事例数を増やすとともに,それぞれの鑑別について随時検討を行うことが現在の課題である。 また対象となる疾患の患者数が充分に収集できない場合は,軽度認知障害の鑑別や,MMSEの五角形模写などの再検討を行う予定である。軽度認知障害は,認知症の前駆段階と考えられ,早期治療の観点から近年注目されている。そのため本研究のテストバッテリーにおいて疾患の鑑別が難しい場合は,軽度認知障害のスクリーニングを目的に研究を転換する予定である。またMMSEなどの簡便な認知機能検査には,様々な認知機能を測定している下位項目が存在する。しかし,五角形模写などの複雑な課題が0-1の配点であり,課題の複雑さから考えると過小であるように思われる。また近年,Clock Drawing Testなど描画における認知機能検査の有効性が注目されている。そこで,当初の目的が充分に果たされない場合は,臨床現場で広く利用されているMMSEの課題の再検討を行う予定である。
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