本研究は,既存の認知機能検査をテストバッテリーとして複数使用し,認知症,せん妄,うつなどの認知機能障害の鑑別を目的としている。また認知症は,各種認知症の総称であり,一般的には四大認知症とされる,アルツハイマー型認知症,前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症,脳血管性認知症が挙げられる。これらの各認知症においても,症状として見られる認知機能障害にはそれぞれ相違があることが指摘されている。このため本研究では,認知症と非認知症であるせん妄,うつの鑑別を第一の目的とし,第二の目的として四大認知症の鑑別を目的とする。 また本研究で用いる認知機能検査は臨床現場において,一般的に用いられているMMSE,HDS-R,COGNISTAT,JARTである。臨床現場における,これらの使用頻度の高い認知機能検査が,疾患の鑑別を補助できるようになることは,老年期医療において大きな意味を持つと考えられる。 これらの目的を達成するために本研究では,横浜市立みなと赤十字病院の協力を得,現在1900人強の調査協力者を確保することができた。すでに発表された実績としては,第一にこれまで認知機能障害の影響を受けにくいとされていたJARTが,認知機能の低下に一定の関連を示すこと,第二に複数の認知機能検査をテストバッテリーとして検討することにより,その後の認知機能の低下が一定程度予測できる可能性を提示した。また今後随時発表予定であるが,本研究の目的であった,うつ,せん妄,認知症の鑑別,その後の四大認知症の鑑別についても,検討及び発表準備を進めている。
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