本研究は,知的障害がある子どもにおける数概念発達のプロセスを明らかにしようとしたものである。現代社会に見られるテクノロジーの発展は、そもそも人類が数を発見したことに由来し、その意味でも数概念は人間の高次認知過程を考える上で重要なトピックスのひとつである。また,(均等)配分行動は人間による数的な操作活動のなかで,もっとも古い起源をもつ。よって初期の数概念と均等配分行動との関係を捉えることで,人間が環境と相互作用しながらどのように数概念を発達させているのかその発達過程を追究した。 特に数概念の獲得が難しいと言われる知的障害のある子ども(発達年齢が幼児期)についてはことばの力(語彙年齢)も考慮に入れ、個別実験により研究を進めた。また通常発達の子ども(幼稚園児)も対象とし、子どもがどのように事物を扱っているか(実験課題において、どのような方略を用いているか)そのストラテジーを分類し分析をした。 本実験で扱った4以上10までの数については、人間が即時的に把握できる数の大きさによって発達段階が分かれ、計数や多少等判断の理解、方略は均等配分の達成、方略と互いに関連しあっていることが現時点で見いだせたことである。 本研究はインフォーマル算数とも呼びうるテーマでもあるため、得られたデータ、知見については、教科とくに算数・数学の学習を積み上げていくことが難しいと言われる障害児教育の分野、幼小連携にかかわる幼児教育カリキュラム等で問題を議論する際の基礎的資料になると思われる。
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