グローバル化に伴う、「民主主義の赤字」の問題に対処すべく、国内の統治構造のあり方を問い直すのが本研究の最終的な目標である。とりわけ、本年度においては、①国内裁判所の機能分析を深化させるとともに、②国内の行政機関や行政手続が果たすべき役割の解明に取り組むことが目標とされていた。 まず、①国内裁判所の機能分析の面については、昨年度の研究成果をベースとしながら、補充的な資料収集を国内外で行い、アメリカにおける議論とその日本への影響について論文にまとめることができた。(「憲法問題としての自動執行性」として、帝京法学29巻1号343頁以下に掲載。)さらに、ドイツ(語圏)における議論についても資料収集を、ドイツ・オーストリアにおいて行い、特に、ドイツにおいては、マックス・プランク国際公法・比較公法研究所所長のvon Bogdandy教授との意見交換も行った。その成果として、ドイツ語圏における議論の基礎的な点についてのまとめは、前掲の帝京法学掲載論文にも反映させた。 次に、②国内の行政機関や行政手続を巡る点については、従来の国内議会の役割に関する研究の成果をまとめるにあたってそれにも言及し、山田哲史「グローバル化時代の議会民主政(二)~(五)・完」法学論叢173巻3号101頁以下・173巻4号103頁以下・174巻1号81頁以下・174巻2号102頁以下や、山田哲史「国際的規範と民主政 ―アメリカ合衆国における議論を手がかりにしてー」帝京法学29巻1号223頁以下に反映させた。さらに、この研究の発展として、グローバル行政法論の研究も深化させ、その世界的研究拠点であるニューヨーク大学における資料収集を行った。また、これらの成果は、国立台湾大学で開催された比較憲法ワークショップでの報告にも反映させた。
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