研究課題
世界人口の内60%にも及ぶ東アジア地域では、人権を擁護する地域レベルの人権擁護組織が唯一に存在せず、現在、導入が求められている。この研究は、東アジアのこのような人権擁護組織の欠陥が克服し得るかを検討すべく、当地域内の異なる二つのイニシアチブの実績を評価したものである。第一に検討したのは、1993年に鳴り物入りで始まった東南アジア諸国連合の人権擁護組織設立プロジェクトである。当連合が、東北アジアにある日本、中国と韓国の3か国とも協力枠組みを持っている為、東アジアの包括的人権擁護組織の展開が期待される。しかし、20年も前に始まったこの計画はまだ実現を見ていない。長い過程の末ようやく設立されたASEAN政府間人権委員会は、法的拘束力を有する判決も下せず、人権を擁護した事例は一つもない為、説教以上のことができない。第二に検討したのは、上記の政府間のイニシアチブと違って各国の政府から独立した国内人権擁護委員会から構成されたアジア太平洋フォーラムである。当フォーラムは1996年に設立されてから東南アジアのほぼ全ての国から国内人権擁護員会を受け入れ、活動内容の多様化や構成の多層化をも果たした。貢献として取り上げられる例としては、モンゴルとフィリピンにおける虐待行為を容認する法律の改正や、ニュージーランドでのテロ被疑者の長期留置防止等がある。このような当フォーラムの機能は地域人権擁護組織のそれによく似ているが、東アジア国際関係において最有力国であろう日本、中国と台湾による、国内人権擁護委員会への参入を、まだ確保できていないことが大きな欠点である。上記の評価以外にも、この研究の貢献が二点ある。第一に、ボトムアップ型人権擁護組織であるアジア太平洋フォーラムの発展を紹介したことである。第二に、東アジアの人権擁護欠陥を克服する有力な方策として、共益関係にある二つの組織が共働するという進路を提案したことである。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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