本研究期間において、非線形経済動学モデルの構造変化に関する安定性・不安定性に関する新たな議論を提示することができた。古くからパラメータの変化に対する分岐分析を用いた動学分析が盛んであったが、本研究ではモデルパラメータの追加・削除に対する振舞いを調べる比較分析手法を、よく知られている産業連関分析とも関連の深い二部門最適成長モデルに対して展開した。その結果として、通常の非線形分析では無視される生産要素の存在が景気循環経路の発生を決定する可能性があることを示した。より具体的には、資本蓄積を表す位相図に対して完全雇用条件が急峻な傾きを持つケースのみ扱ってきた従来の分析を、ゆるやかな傾きをもつ要素が存在するケースについても拡大し、前年度までに得られた理論成果を応用して非線形挙動の存在を示した。これは今後二部門理論をベースにモデルを展開する上で重要な進展であると考えられる。ここで得られた関係式を利用することで、モデル化に関する判断をより精密にすることができる。 本研究は、理論経済学の国際学会である SAET2013 で "Complex dynamics in a two-sector optimal growth model with three production factors" として報告された。
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