申請者の一連の研究では現実場面での加齢に伴うリスクを低減し、高齢者にとって安全・安心な社会を作り出すことを目指している。高齢期は加齢に伴う変化が顕著であるが、多くの健常な高齢者は実際に日常生活を送る上でその変化に適応するために経験や生活習慣によってリスクを補う方略を行っている。本研究では、日常場面だけでなく、現在高齢者の関わる問題の中でも事故のリスクが高くその解決が急を要する交通場面に焦点を当て、高齢者の認知機能と行動パフォーマンス、補償方略の三者間の関係性を明らかにすることで高齢者に有効な対策を立てることを目指した。本研究では、一般高齢者を対象として、認知機能が運転行動に与える影響を明らかにすることを目的とした。次に、加齢に伴う変化を補うために効果的な補償方略の検討を踏まえた上で、免許返納に関する意思決定について明らかにすることを目的とした。 具体的な研究内容は以下の通りである。まず、高齢ドライバーの認知機能と運転行動の関係を検討するために、高齢者及非高齢者を対象に行った走行実験の結果を解析した結果、特定の認知機能と特定の運転行動に関連が見られた。さらに、補償方略に関して、高齢ドライバーでは、運転行動が低下した者ほど補償を行っていること、用いる補償によって事故もしくは違反への影響が異なることが示された。次に、若年群、中年群、高齢群を対象にしたインターネット調査を行った結果、免許保有の有無によって免許返納の意思決定が異なることが示された。 また随時研究会及び学会等で結果の発表を行った。
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