研究概要 |
本研究の目的は,人間の視覚的空間定位のメカニズムを明らかにすることである。この目的のもと行った本年度の研究成果は,国際専門誌に掲載された2本の学術論文([1]Yamada, Kawabe, & Miura, Neuroscience Letters, 2012; [2]Yamada & Kawabe, PLoS ONE, 2013)によって公表された。 [1]の研究では,実験参加者自身の名前(苗字)を画面上に呈示し,それとは別の瞬間的に呈示された物体の位置の再生を求めると,再生位置が自分の名前に偏るという結果を示した。このことは自分の名前に自動的に向けられる視覚的注意によって視空間が歪められたことを示唆する。また,[2]の研究では,オブジェクトベースの非網膜位相的運動によって瞬間的に呈示された物体の位置の知覚がずれることを示した。この結果は,網膜位相に依存しない,高次の運動処理やあるいは視覚的注意の移動によって視空間が歪められたことを示唆する。 これらは本研究目的における解明の対象となる視空間定位メカニズムにおいて,視覚的注意や高次の視覚処理が重要な役割を果たすことを示しており,今後の研究においても重要な先行知見となった。 さらに,計画書に記載していた「他者の視線が視空間定位に与える影響」に関する論文も国際専門誌にて既に印刷中の状態である(Yamada & Kawabe, Universitas Psychologica, in press)。この研究も空間定位における視覚的注意の重要性を示しており,その意義は大きい。 したがって,以上のことから本研究の進行は順調であると言え,研究費受け入れ期間内に研究目的を達する見込みは大きいと考えられる。
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