研究課題/領域番号 |
24830057
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
山中 和佳子 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (20631873)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 戦前期の学校 / 器楽活動 / 子どもと楽器 / 吹奏楽 |
研究概要 |
平成24年度は、戦前期の学校における器楽に関する活動事例やそれを取り巻く社会的な風潮を検討するため、「吹奏楽」「ブラスバンド」、授業としての「唱歌」「芸能科音楽」の指導内容に焦点を当て、大正から昭和初期に出版された音楽雑誌及び音楽教育雑誌の調査を行った。また、戦前期には実際に学校でどのような音楽活動がなされていたのか、また子どもたちがどのような場面で「楽器」に触れていたのかを検討するため、岡山、東京、長野の図書館に所蔵されている学校文書を調査した。 長野については、旧開智学校の学校文書を対象として日誌などを検討した結果、学校に明笛(横笛の一種)などが所蔵されていたこと、また運動会では地域から演奏楽隊を招いていたことなどが明らかになった。さらに、昭和初期までの学校日誌を保存している学校を調査し、その一つとして岐阜県の小学校を対象として、明治期から昭和初期の学校日誌から学校における器楽活動に関連する内容の調査を行った。その結果、当該小学校においては大正期にすでに子どもたちによる楽隊を編成して音楽活動をしていたことがわかった。 これらの成果をふまえて、大正から昭和初期に、どのような楽器が学校教育に導入されており、楽器を用いた指導や活動がどのように展開されたのかという問いに対して、子どもたちの音楽経験という視点から各学校レベルでの精査を行いそれに答えることは、現在まで続いている学校教育における器楽指導の形成過程を明らかにし、今現在も研究が少ない日本の器楽指導に関する史的研究に寄与するためにも重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、『音楽之友』『音楽芸術』『ブラスバンド』などの音楽雑誌、『教育音楽』『国民学校』などの音楽教育に関連する雑誌の精査及び昭和初期までの音楽教育に関する政策などの資料調査を行ってきた。その結果、入手した器楽活動に関する雑誌・著書関連によって、昭和初期の先駆的な実践校の器楽活動については調査できている。 また、吹奏楽の活動についても昭和初期の先駆的存在であった中学校教師が著した記事を蒐集し、彼が目指していた吹奏楽指導の音楽的・教育的意義の検討を行ってきた。 個々の地域や学校に保存されている学校文書については、所蔵している学校を調査しているものの、改築等によって処分している学校が多いため、今後は特にこれまで十分な調査ができていなかった福岡の学校調査及び所蔵文書の調査も進めることが必要である。 また、研究当初には課題としてはいなかったが、当時学校教育において使用されていた簡易的な楽器及び吹奏楽における楽器の特質についても明らかにする必要がでてきため、今後は当時の楽器教則本などの分析も必要とする。
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今後の研究の推進方策 |
①地方の学校や図書館に所蔵されている学校文書の調査を引き続き行う。 ②国会図書館及び東京芸術大学附属図書館等において、大正から昭和初期における音楽関連の雑誌や吹奏楽に関する教則本などについて精査しながら、平成24年度の研究によって新たに課題となった、学校教育用として当時使用されていた簡易的な楽器や吹奏楽で用いた楽器の特質について明らかにする。 ③当時の音楽教育をけん引していた小出浩平や、「器楽教育」の先駆的な実践を行っていた上田友亀などの音楽教育者たちによる音楽教育の理念及び器楽指導に対する見解を、蒐集した資料から明らかにする。 ④大正から昭和初期の学校教育において使用されていた楽器の特質、子どもたちが簡易的な楽器、及び吹奏楽の楽器を用いて演奏していた楽曲の特質、子どもたちの「器楽」経験(授業としての体験、課外活動:吹奏楽・ブラスバンドとしての体験)について、これまで蒐集した資料から総合的にまとめる。 ⑤音楽教育の関連学会において研究成果を発表する。
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