研究課題/領域番号 |
24830059
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
針塚 瑞樹 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (70628271)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 若者 / 進路選択 / 社会関係 |
研究概要 |
本研究は、18歳までにストリートチルドレンに支援を行うNGOで教育をうけた経験を有するインドの若者の就職や結婚における選択・決定の場面に着目しつつ、若者の共同的関係性の構築過程を明らかにすることを目的とした。これらの若者の多くが貧困家庭出身者であり、10歳前後で家出し、家族との別離を経験している。子どもの頃に家族という共同体を離れ、NGOという共同体に接触した若者の共同的関係性構築のプロセスについて、個人の経験と意識に焦点を当ててインタビューを行うことで、社会的弱者層の子ども・若者にとっての共同体的存在の条件をも検討を行うことを目的とした。 初年度である平成24年度には、計2回の現地調査を行った。2012年12月には、研究者がこれまで調査を行ってきたNGO出身者のうち2人が進学のために移住したチェンナイにおいて、2人の大学生活と進学後の社会関係についてインタビューと大学生活の観察を行った。2012年12月と3月にはNGO出身の若者と大学生の社会関係をを比較するために、2人が通う工学系の私立大学に通う大学生を対象として大学進学時と大学卒業後の進路選択に関してインタビューを行った。その結果、明らかになったことは以下の二点である。①中等教育修了時の進路選択をNGO出身者と大学生とで比較すると、その選択・決定に関してNGO出身者が自分で決定している部分が大きく、意識的であること。②大学卒業後の進路に関しては、急速な高等教育拡大、商業主義的な大学経営、リーマンショック後の不況という状況のなか、大学生は進路決定に困難を抱えながらも、大学生活を通じて進路選択に資するような社会関係を構築できず、家族や親族にも情報やコネクションの提供を期待できないこと。 本研究の主目的である社会的弱者層の若者の共同的関係性の構築過程を明らかにすることは次年度の課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに数年来の調査協力者であるNGO出身者と彼らを通じて知り合った大学生を対象に調査を行ったことで、比較的スムーズにインタビュー調査を行うことができた。 NGO出身の若者に対する進路選択のインタビューでは、大学生活を送るなかで、彼らが同じ大学に通う学生や大学の教員との関係性を有していることが明らかとなったが、卒業後の進路に関しては、大学関係者者や友人からは十分な情報を得ることできていないことが明らかとなった。NGO出身者との比較のためにインタビューを行ったチェンナイの私立大学生については、大学進学時の進路選択に関しては工学系という専門の選択については、成績や親のアドバイスをから自然と決定したという意識をもっている事例が多かった。しかし、大学選択については情報がないなか、広告やインターネットの情報を頼りに行っていた。また、卒業後の進路選択に関しては、家族は精神的な支えとしながらも、具体的なアドバイスや支援をえることができているわけではないことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、初年度の調査で得られたデータを整理し、若者のキャリア形成と結婚における選択・決定に関して関係性があることが語られた個人・集団についてさらに詳しい現地調査を2回行う。若者が共同的な関係性を構築している相手との関係性についてさらに深い話をきくために、可能な相手とはチャットやスカイプ通話を行い、若者が共同的な関係性を有している相手へのインタビュー調査の許可を求める。3月の現地調査は、3回の調査を経て必要となった補足調査を行う。具体的には以下の点について、調査、考察を行う。 1)若者のキャリア形成と結婚に関係する個人・集団の把握 2)若者が共同的な関係性を有する個人・集団との関係性の構築過程の把握 3)社会的弱者層の若者が共同的な関係性を構築しうる個人・集団の条件
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