1990年代からインド政府はNGOと連携して、すべての子どもに対する福祉と教育の保障に取り組んでいる。その結果、労働や路上生活の経験のある社会的弱者層の子どもの多くは、NGOなどの組織により、何らかの支援を受けた経験をも有している。本研究の目的は、18歳までにストリートチルドレン支援を行うNGOに支援をうけた経験を有する若者の就職や結婚における選択・決定の場面に着目しつつ、若者の共同的関係性の構築過程を明らかにすることである。これらの若者の多くが貧困家庭出身者であり、10歳前後で家出し、家族との別離を経験している。子どもの頃に家族という共同体を離れ、NGOという共同体に接触した若者の共同的関係性構築のプロセスについて、個人の経験と意識に焦点を当ててインタビューを行うことで、社会的弱者層の子ども・若者にとっての共同体的存在の条件をも検討を行うことを目的とした。最終年度である平成25年度には計2回、NGO出身者の多くが居住するデリーにおいて、NGOの施設から自立した若者の就労と結婚の選択・決定についてインタビューと観察を行った。 本研究を通じて、路上生活経験のある社会的弱者層の若者の共同的関係性の構築過程に関連して明らかになったことは以下2点である。①NGO出身者はキャリアに関する選択・決定をNGOの助言や支援を受けながら行っているが、大学生の進路選択と比較して、意識的に自分で選択・決定を行っていること、②NGO出身者の多くが家族・親族の意向に基づき結婚を行うインドの一般的な若者と比較して、結婚に関する選択・決定(時期、結婚相手、婚姻儀礼等)をNGOを通じた社会関係に基づき自分で行っている部分が大きいこと。
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