現在の日本は、少子高齢化の現状と、将来的に人口減少と労働力不足が深刻化することが予測され、その対応策の一つとして、外国から労働力を受け入れるか否かの議論が活発化している。同議論の背景には、東北大震災からの復興、首都圏インフラの建て替え時期、東京オリンピック開催に伴う建設ラッシュによる土木・建設系の労働力の確保と、福祉・医療分野の人材の確保が必要になっているからである。ここで検討されているのが国際貢献のもとに設計された技能実習制度である。 本研究は、地方の労働力不足問題に着眼した。本年度に行った外国人技能実習生を雇う聴き取り調査によると、地方では絶対的に労働力が不足しているため、規模の経済を狙った経営戦略を立てにくいという。また、高度人材と資本は都市部に集まるため、産業・業種も限られてくる。都市部と比較し賃金が低いため、量のみならず質の高い人材確保も難しい。高齢者の割合が高く、60代が若手として活躍している。こうした現状の中、地方の中小零細企業の経営者たちは、経営を維持するだけでも苦慮している現状があった。特に農業分野は、グローバル化の進展で国際競争によりさらされようとしている。経営を維持しながら品質の高い農産物を作るには、人件費を減らす他ない。このような背景が農業分野における技能実習生受入れ数が増えている。その多くはアジア諸国からである。協同組合が監理団体として受入れを行い、中国、フィリピンなどアジア系労働者が、農業協同組合の運営する農場や各農家で働いていた。 地方農業分野における外国人技能実習生は、安く労働力を確保できることが大きなメリットであるが、副次的な効果として、若者との交流機会、村内部のしがらみや雇用関係から逃れられるなどが挙げられる。一方、文化の違い、言葉の壁は問題として挙げられた。また、労使関係におけるトラブル、脱走・逃亡、賃金未払いなどが問題である。
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