本研究の目的は、養護教諭が保健室で行っている中学生を対象とした健康管理能力を育成するための対応プロセスを概念化することである。対応プロセスを概念化するためには、養護教諭が行う健康管理能力を育成するための対応の根拠や評価の方法を実践知から明確化することが必要である。本研究においては、第一研究で明確化された、養護教諭が保健室で行っている中学生を対象とした健康管理能力を育成するための17の視点のうち、養護教諭の対応の数が比較的多く、子どもが生涯を通して主体的に健康を保持増進していく上で重要であると考えられる「自己決定・判断能力」、「自己表現能力」、「対人関係能力」の3つに着目した。そして今回の研究では、これら3つの能力を育成するための養護教諭の対応の根拠「判断の基準」と評価の方法「評価の観点」を実践知から明確化するために、現役養護教諭にインタビュー調査を行った。その結果、対応を施す前の子どもの状態や子どもを取り巻く周囲の状況等について、質的に分析することにより、養護教諭の対応の根拠「判断の基準」を明確化することができた。例えば、自己決定・判断能力の育成のための対応を例にあげると、対応の根拠「判断の基準」となる子どもの状態では、「おどおどしている」「話をしない」等があげられ、子どもを取り巻く周囲の状況に関する対応の根拠「判断の基準」では、「母親の言動が先立つ」等が明確化された。評価の方法「評価の観点」は、対応後の子どもの変化や状態を質的に分析することにより、明確化することができた。例えば、自己決定・判断能力の育成のための対応を例にあげると、「言語化できた」「自分で考える時間がもてた」等が明確化された。 また、第二研究で明確化された、3つの能力を育成するための養護教諭の対応を一般化するために、中学校に勤務する養護教諭を対象に全国調査を行った。その結果、信頼性と妥当性が確認できた。
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