本研究の目的は,日本語のかなと漢字の2種類の文字間の比較を通して,学齢期初期の児童における読み書きの発達に対する,正書法の一貫性の影響を明らかにすることである。平成25年度は,まず本調査に使用するための尺度群の一つである形態素(morpheme)に関する知識を評価するための課題(「単語類推課題」)を作成した。形態素は,個別言語における意味の最小単位であり,それに関する知識が子どもの読みの発達に寄与することが主に英語圏の研究から示されているが,国内においては十分に検討されていなかった。小学1年生25名,2年生25名,計50名を対象とした予備調査から,特に1年生においては,作成した課題によって形態素に関する知識を評価することができることが確認された。 平成25年度末には,これら本研究のために開発された一連の尺度群を用いて,縦断的検討の第1回目となる本調査の一部を実施した。対象は,平成26年度に小学1年生になる予定の,幼稚園あるいは保育園の年長の幼児74名であった。これまでの結果から,本研究において開発された尺度を含め,幼児における個々の要素的認知機能の個人差を適切に評価することができており,経過は良好であると考えられた。なお,次年度以降(平成26年度から平成27年度)にもおよそ半年の間隔で継続して本調査を実施し,縦断的検討を完成させる予定である。具体的には,対象児が1年生となる平成26年度前半の調査においてはかなの読み書き課題を,同年度後半の調査においては漢字の読み書き課題を,それぞれ実施尺度群に追加し,本年度に実施した尺度群のうちどの要因が,後の読み書きの発達にとって重要であるかを明らかにしていく。
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