研究課題/領域番号 |
24830075
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大塚 類 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (20635867)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 事例研究 / 特別支援教育 / 質的研究 |
研究概要 |
本研究は、児童養護施設や小学校でのフィールドワークで収集した事例に基づき、基礎学力が身につかなかったり、教室から飛び出したり、静かに授業を受けながらも実は参加していなかったりと、それぞれに異なる仕方で学びに逃避的である子どもたちのありようを、彼らの思いや状況に即して捉えなおすことを目指している。この目的の達成のために、本研究では、①本研究に独自の自己肯定感の概念化、②教職員への聞き取り調査、③子どもたちの事例研究、の3つを研究の柱としている。 ①本研究に独自の自己肯定感の概念化については、先行研究の収集・分析と、日々収集している事例とのすり合わせを行ないつつ、概念化を行なっているところである。 ②本年度は、教職員2名への聞き取り調査を行なった。1件目は、児童養護施設における治療指導担当職員への聞き取り調査である。発達障害を抱える入所児童への治療的なかかわりの内実について聞き取り調査を行ない、その成果を論文として発表した。2件目は、新任中学教諭への聞き取り調査である。新任教員が感じる生徒とのかかわりの難しさについて語ってもらった。 ③子どもたちの事例研究は、児童養護施設を校区内にもつ首都圏の公立小学校に毎週、地方の公立小・中学校に2回、フィールドワーク調査を行なった。特に、首都圏の公立小学校では、(1)教室からの飛び出しや授業妨害などを表出する子ども、(2)静かに授業を受けながらも実は参加していない子ども、(3)学習意欲もあり、器質的な問題もないにもかかわらず、基礎学力がなかなか身につかない子どもに着目し、通年にわたる事例の収集と考察を行なっている。また、その成果を、事例研究の論文集や教育機関のwebでの連載として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成24年度は、理論的基盤整備の段階であり、事例と文献資料収集を主として行なう予定であった。 研究の第一の柱である自己肯定感に関しては、自己肯定感とその関連概念に関する文献資料、現象学における自己意識や時間意識に関する文献資料、学力や学習意欲に関する文献資料の収集と論点整理を行なう計画であり、そのように実施した。しかし、本研究に独自の自己肯定感の概念化までは至らなかったため、平成25年度に引き継ぐ課題としたい。 研究の第三の柱である子どもたちの事例研究については、児童養護施設と小学校での継続的なフィールドワークによって事例を多数収集する計画であり、そのように実施した。かなりの事例が収集できたことに加え、事例の考察に基づく報告書も発行することができた。 さらに、研究の第二の柱である教職員への聞き取り調査については、今年度は予定していなかったが、2件行なう機会に恵まれ、うち1件は論文として発表することができた(2013年4月発行)。 。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も、前年度から継続して、①フィールドワークによる通年的な事例の収集と分析、②本研究に独自の自己肯定感の概念化、③事例の分析がある程度進んだ時点で、事例として取り上げる子どもを担当している児童養護施設や小学校の教職員を主たる対象として行なう聞き取り調査、という三本柱で研究を進めていく。 本研究は、基本的に、一人で遂行するものである。そのため、視点の固着化を防ぐためにも、研究領域や関心を同じくする他の研究者に、研究の進捗状況と内容を定期的にプレゼンテーションし、フィードバックやアドバイスを得るという形で研究を推進してきた。2年計画の最終年度であることから、今年度は、研究領域や関心を同じくする他の研究者たちとの共著で、研究成果を書籍化して発行する予定である。 さらに、本研究が最終的に目指すのは、学力や学習意欲が低い子どもたちの自己肯定感、主体的な学び、基礎学力と学習意欲を底上げするための働きかけの方法を、具体的に提案することである。この提案は、子どもたちの現実のありように即し、かつ、施設や小学校の教職員の現場ニーズに対応したものでなければならない。そのため、昨年度と同様、今年度も、教職員に対しても、研究の進捗状況と内容を定期的にプレゼンテーションし、フィードバックを得る予定である。今年度は、地方の公立小・中学校で研究成果発表の機会をいただく予定になっている。上述の研究成果の書籍化に際しては、こうしたフィードバックも十分に反映させたものとしたい。
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