本研究の意義は、既存研究では単純に提携の数のみでしか語られなかった複数の企業間提携が織りなす特性についてより質的な面に着目し、その個々の提携のパフォーマンスに与える影響を理論的に説明することで、企業間提携の研究への貢献を計るものである。平成24年度下半期については、理論モデルの構築並びにデータセットの整理に従事した。理論モデルについては、取引コスト理論に基づき、2社の企業間での複数の提携関係が織りなす特性のうち、提携の相互依存性、提携の複雑性、相互的な提携の支配が存在する場合、より個々の提携のパフォーマンスが上昇することを理論的に導いた。 データセットについては、1990年から2009年までの日本の金融を除く上場企業の海外における企業間提携を、「海外企業進出総覧」に記載されているジョイント・ベンチャーのデータから作成し、企業レベルのデータと組み合わせ、分析のための準備を整えた。企業間提携の研究において、20年という長期間で、非金融の上場企業全社のような大規模なサンプルを対象として研究を行っているものは多くはなく、その希少性は高い。 また、企業間提携に従事した経験を持つ複数の上場企業役員にインタビューを行い、理論モデルの妥当性の確認を行い、モデルの精緻化に勤めた。インタビューによれば、理論モデルで予期されたとおり、2社間の企業間提携において、複数の提携を行っている場合、それぞれの提携がその遂行に影響を与え合い、結果として提携からの利得、提携の存続などのパフォーマンスに影響を与えうることが定性的に確認された。
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