本研究「地下水ヒ素汚染地域における持続可能な代替水の選定に関する研究」の目的は、地下水ヒ素汚染問題が顕在化しているカンボジア王国(以下、カンボジア)村落部における住民の水使用形態とその行動因子となっている安全な水に対する観念について把握すると同時に、現地に適切な代替水や水供給手法を提案することである。 本研究の対象村落部であるカンダール地域は、地下水ヒ素汚染濃度が非常に高い地域であり、高濃度のヒ素が含有している地下水を飲用することによる慢性ヒ素中毒疾患が問題となっている。本研究では、現地フィールドワークを中心とした調査研究を行ってきた。特に地下水の代替水である、雨水や河川水などの水質実測、さらに現地で入手可能なボトル水の価格調査を実施してきた。また凝集剤として使用できるミョウバン(現地ではサッチューとい言う)の収集可能性や価格調査なども実施し、適正技術を用いた安全な水供給手法について調査してきた。 本研究の結果として、雨水や河川水に病原性微生物汚染(大腸菌群、大腸菌)が確認された。河川水は動物などの影響により微生物汚染があることは一般的に解ることであるが、雨水は屋根で雨水を集水する際に、鳥などによるし尿汚染や衛生的な貯水タンクの欠如による汚染があると考えられる。さらに雨水タンク内には、地下水を貯水するビヘイビアも確認しており、雨水と地下水の混合水を利用していることが明らかになった。ボトル水500mlは安いもので500リエル(約13円)のモノが確認された。しかし、これを飲料として用いることは収入額が低い村落部では経済的に妥当ではないことが明らかになった。これらの調査により、今後官民連携によるBOPビジネスの必要性や適正技術による安全な水供給の取り組みが必須である。これらを取り纏めたものは国際開発学会にて論文発表を行っている。
|