研究課題/領域番号 |
24830085
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高橋 典史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50633517)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 社会学 / 宗教社会学 / 多文化共生 / 情報交換 / インタビュー調査 / フィールドワーク / 文化人類学 |
研究概要 |
平成24年度は、主として日本における在日外国人たちの集う宗教組織に関する基礎的データの収集を行った。とくに日本のマルチエスニックな宗教組織の代表的な存在であるカトリック教会の関連組織についての調査を重点的に実施した。北海道札幌市・小樽市、東京都内、大阪市、静岡県浜松市等に所在する多文化共生関連の組織を訪問してインタビュー調査を行い、各種資料を収集することを通じて、各地域ごとの在日外国人支援の特徴を明らかにしていった。さらに移民の宗教に関わる基本文献を購入して、基礎情報の収集に努めた。こうした調査から得られたデータを、アルバイトも用いて整理・分析をすることによって、現代日本の宗教組織による在日外国人支援の中核を、カトリック教会ないしその関連組織が担っているという実態が浮かび上がってきた。 こうした調査と並行して、研究成果の公表も随時進めていった。研究代表者が主催している「宗教と社会」学会公認プロジェクトである「現代社会における移民と宗教」プロジェクトの研究会を、平成24年11月、平成25年1月の計2回開催した(地域研究コンソーシアム(JCAS)次世代ワークショップ(大阪大学GLOCOL国際協力・グローバル共生枠採択課題)との共催)。同研究会では、研究代表者のほか、本研究課題と関連する研究を進めている研究者たちが研究報告を行い、有意義な情報交換を行うことができた(研究代表者の発表題目:「「現代社会における移民と宗教」研究の課題と射程 」)。さらに平成24年11月には、日本社会学会第85回大会においても研究報告を行った(研究代表者の発表題目:「現代日本の宗教組織による滞日外国人支援の展開」)。そして、これらの研究活動の成果を踏まえつつ、次年度以降に公表予定の学術論文の執筆準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の当初の研究計画では、カトリック教会以外のキリスト教系の諸組織や、外国人信者を多く抱える諸々の新宗教教団についても幅広く調査対象にする予定であったが、実際に研究を進めていくうちに現代の日本において、在日外国人支援を圧倒的な広範さで展開しているのはカトリック教会であることが判明していったため、カトリック教会への調査を集中的に実施することとした。その結果、カトリック教会関連の組織や事業については、当初の計画以上の膨大な資料を収集することができ、次年度以降の研究の基礎となるデータを蓄積できた。また、当初は平成25年度に実施予定であった英米圏における移民と宗教に関する事例研究の検討にも着手することができた。 また、研究成果の公表に関しては、研究代表者が主催している「宗教と社会」学会公認プロジェクトである「現代社会における移民と宗教」プロジェクトの研究会を、地域研究コンソーシアム(JCAS)次世代ワークショップ(大阪大学GLOCOL国際協力・グローバル共生枠採択課題)との共催で開催できたことは、より開かれた学術成果の発表となっただけでなく、学術的交流という意味でも特筆すべき成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は、前年度に引き続いてカトリック教会を中心とする多文化共生関連の諸組織についての調査(文献調査および訪問調査)を進めていくことにより、現代日本における宗教組織による在日外国人支援の意義とその課題について明らかにしていく計画である。そこではとくに行政や世俗の一般的な民間組織とは異なるかたち、もしくはそれらで提供されている支援からはこぼれ落ちがちな在日外国人のセーフティネットとして、宗教組織がどのように機能しているのかを解明する。それとともに日本の諸事例と他国との比較考察も試みる。日本で言うところの「多文化共生」に関わる取り組みの先進国でもあるアメリカ合衆国やカナダ等の動向を把握することで、国際比較研究の第一歩とする。 そして各調査から得られたデータを包括的に分析し、その成果を段階的に関連学会の学術大会等において発表していく。さらにそれらを踏まえて学術誌に向けた論文を執筆し、次年度以降の国際発信に向けた準備も進めていく。
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