研究概要 |
(1) 女性労働者の職業能力開発の規定要因とその効果に関する分析 個人マイクロデータを使って、女性の賃金を規定する要因として職業能力開発に着目した分析を行った。本研究では、過去の職業キャリアで経験した人的資本形成が、現在の女性の賃金にプラスの影響を及ぼすことを明らかにした。しかし、それが男女間賃金格差の縮小にまでは影響を及ぼさないことをあわせて明らかにした。男女間賃金格差が縮小しない原因として、様々な職業能力開発機会の格差であると考えられることから、職業能力開発の男女間の違いがどこにあるのかも分析した。その結果、OJTの機会やOff-JTの内容などで男女の間に大きな違いのあることが明らかにされた。分析結果から、女性は平均的に勤続年数の短い労働力であるために、企業に、訓練とくに長期育成を考慮した訓練を差し控えさせることになっていることが推測され、こうしたことを変えていくためには、家庭内での男女間の役割分担意識や社会の意識を変える必要性を指摘した。 分析の結果は、2013年3月に、 「女性の賃金と職業能力開発」(『働き方と職業能力・キャリア形成:「第2回働くことと学ぶことについての調査」結果より』, 労働政策研究報告書 No. 152, 労働政策研究・研修機構, 第7章, pp. 143-166)として公表した。また、この結果を”Women’s Wages and Work Skill Development”という論文にリバイズし、2013年度日本経済学会秋季大会で報告する予定としている。 (2) 最低賃金引上げが職業能力開発に与える影響に関する分析 分析の準備として、政府統計の個票の利用申請を行い、『賃金構造基本統計調査』と『能力開発基本調査』の5年分のデータを入手したところである。これを用いて、今後計量分析を行う予定である。
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