研究課題/領域番号 |
24830087
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
山嵜 輝 法政大学, 経営学部, 准教授 (60633592)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | デリバティブ / 確率ボラティリティ / ジャンプ / レヴィ過程 / 時間変更型レヴィ過程 |
研究概要 |
2012年度は、前年度の博士課程時代からの継続研究として、金融商品のデフォルト(債務不履行)や期限前償還などのリスクを比例ハザード型の確率モデルで表現し、金融商品の経済価値を評価する手法の研究に取り組んだ。同様に継続研究として、金融資産価格のジャンプや確率ボラティリティが表現可能な時間変更型レヴィ過程を用いて平均オプションの評価手法を研究した。さらには、新規研究課題として、この平均オプションの評価手法を拡張することで、その他のエキゾティック・デリバティブの評価手法の検討を行った。 比例ハザード型の確率モデルによる金融商品の評価手法の研究では、確率ボラティリティやレヴィ過程(ジャンプ)を説明変数とする設定条件の下で、キュムラント展開を利用した近似評価手法を開発すると共に、近似手法の理論的妥当性についての研究を行った。この手法の応用例としては、例えば、これまでは計算負荷が重かった住宅ローン債権担保証券(Residential Mortgage Backed Security)の価格が高速かつ高精度で計算出来るようになる。研究成果は論文誌International Journal of Theoretical and Applied Financeに受理済み、掲載の予定。 時間変更型レヴィ過程による平均オプションの価格評価の研究では、グラム・シャリエ展開を利用した近似評価手法を開発した。評価手法のポイントは、時間変更型レヴィ過程の異時点間の同時指数モーメントの計算およびそのモーメントの存在性に関するある関数の定義域の特定であり、金融実務での実用可能性を数値実験で確かめた一方で、可積分条件に関する厳しい制約があることが理論的に示された。研究成果は現在、論文誌に投稿中。また新規研究として、この成果をバリア・オプションなどに拡張した評価手法の研究経過報告を国内シンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり、3つの具体的な研究テーマに取り組んでいるが、1つ目の「比例ハザード型の確率モデルによる金融商品の評価手法の研究」は論文誌からの受理により研究完了としている。2つ目の「時間変更型レヴィ過程による平均オプションの価格評価の研究」は研究成果を論文に纏めることが出来たが、査読中なのでレフリーの反応を待つ状況にある。3つ目の「時間変更型レヴィ過程の下でのその他のオプションへの手法の拡張」はさらなる理論検証と数値実験が必要であり、これが2013年度の主な研究課題となる。研究全体として2カ年計画で取り組んでおり、3つの研究テーマの進捗状況を踏まえると当初計画に沿ったものであり、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
前述の2つ目の研究テーマ「時間変更型レヴィ過程による平均オプションの価格評価の研究」については、論文査読の過程でレフリーの指摘事項に対応する、もしくはリジェクトの場合には論文内容をもう一度精査した上で再投稿する。3つ目の研究テーマ「時間変更型レヴィ過程の下でのその他のオプションへの手法の拡張」については、標準モデルであるブラック・ショールズ・モデルとの価格比較や異なるパラメータ・セットによる価格変化の様子を数値実験により詳細に調べる必要がある。また、極力広範な手法の拡張を目指して理論研究も継続する。今年度中には研究内容を纏めて投稿論文として投稿する。
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