今年度は研究計画において,環境マネジメントに関する質問票調査および,環境マネジメントシステムとMFCAの統合モデルの構築を予定しておりました。これに対して,前者については当初は個人研究を予定していたのですが,ドイツのレウファナ大学の研究チームが主催する国際比較調査に神戸大学の研究チームとともに日本班として参加することで実施しました。これにより日本企業の環境マネジメント実践に関する現状を分析するとともに,国際的なトレンドとの比較について研究業績が発表されています。とくにこの研究は,個別のシステムの採用状況だけでなく,企業の環境経営への認識についても分析しており,包括的に企業の環境経営について分析を行っています。またこのプロジェクトは単年度の調査ではなく,今後,定期的に質問票調査を実施することでプロスペクトな分析を行うことも期待されます。そしてこの調査に基づいて,東アジアにおけるCSRマネジメントの現状分析として,韓国の研究チームとの比較研究を行っており,地域ごとでの共通する背景と,異なる文化背景を踏まえた企業の環境経営の比較分析も行っています。 後者については,日本企業5社へのヒアリングをもとに,BSC(バランスト・スコアカード)の拡張モデルについて共同研究者とともに,SBSC(サステナビリティ・バランスト・スコアカード)としてモデル化を行いました。複数の企業でのヒアリングをするなかで,企業の既存の製品カテゴリーのサステナビリティに対する親和性の程度が異なると,企業のサステナビリティ戦略における指標の利用の仕方,また製品の環境性能をアピールするステイクホルダーが異なることを明らかにしました。
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