平成25年度においては、1951年~1954年の電力会社の企業統治と会計行動を総括原価方式と呼ばれる電気料金決定メカニズムに着目して検討を行った。また、1955年~2012年の総括原価方式の変遷についても、合わせて分析を加えた。その結果、次の諸点が明らかになった。1951年~1954年の3度にわたる電気料金値上げ率は、電気消費者による激しい反対の結果、抑えられた。その中で、電力会社は1952年9月期~1953年9月期の15%配当、1954年3月期以降の12%配当を可能とする利益を計上した。このような利益計上を可能とした1つの理由として1952年3月期における再評価積立金を用いた損失処理や渇水準備引当金の取崩しといった9電力の会計行動を挙げることができる。一方で、9電力の減価償却の拡充は遅れたが、減価価償却の拡充は、最終的には電気料金の値上げによって解決せざるをえず、通産省公益事業局及び世界銀行に代表される債権者からの要求も合わさって、1954年10月に電気料金が値上げされ、9電力による減価償却拡充が図られた。 平成25年度に実施した1951年~1954年、及び1955年以降の電力会社の企業統治と会計行動の分析に加えて、平成24年度までに実施してきた1950年までの電力会社の企業統治と会計行動に対する検討結果を踏まえる形で平成26年3月に東京大学出版会から『企業統治と会計行動―電力会社における利害調整メカニズムの歴史的展開―』が出版された。本書の出版が当該年度における最大の研究実績である。
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