研究課題/領域番号 |
24830091
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
古賀 絢子 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (10633472)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 家族法 / 養子法 / 継親子関係 / 離婚後の監護法制 / 英国法 |
研究概要 |
ステップファミリー(子連れ再婚家族)における継親子関係の法的規律に関しては、継親子が養子縁組を結んで法的な「親子」になることが、継親子の監護養育の実態について法的規律・保護を得るための、現行法上唯一の手段である。これに対して、本研究は、養子縁組とは別に継親子を規律する法的仕組みを提案することを目指す。 平成24年度は、養子法とは別の法制度を立案するための前提という位置づけから、継親子間の養子縁組に関する検討を進めた。特に要件の厳格化を含めた養子縁組の要件・効果の改正の手がかりとするべく、現行養子法による「(継)子の利益」の実現の働きとその限界を明らかにすることを試みた。具体的には、(1)英国養子法を主な対象とした制度比較を進め、わが国の養子法の特殊性を確認し、検討の視点を抽出しながら、(2)わが国の継親子間の養子縁組をめぐる法的実情の整理・分析に取り組んだ。(2)の作業は、報告者が以前に実施した実態調査の成果を基礎資料とした。 その結果、わが国では、養子縁組による継親子の「親子」への擬制及び包括的な法的効果付与へのニーズが非常に根強いことを確認した。それは、わが国で今なお強固な婚姻両親家族規範の下での継親・実親夫婦の「子の利益」観を基礎としたものであり、そうしたニーズの受け皿としての養子縁組の働きは無視できないものと考えた。ただし、その基礎にある婚姻両親家族規範は、かねてより指摘される、離婚後の別居親子関係と継親子関係との調和両立という点(養子縁組の自己完結性―横軸の視点)に加え、ステップファミリー独特の、家族の関係性の経時的変容への対応の点(養子縁組の一回的行為性―縦軸の視点)からも限界があることを新たに明らかにした。 以上の成果について、国内外の学会等で報告を行った。ただし、その内容は部分的なものにとどまるため、平成25年度中に、補強を加えた上で、論文を刊行することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
継親子間の養子縁組の研究をめぐって、次のような課題が発見され、本年度中にこれを完成させることができなかった。 一つには、わが国の法的実態の検討・分析のまとめの作業(【研究実績の概要】(2)参照)について、本検討の基礎資料となった報告者による実態調査は、継親・実親とのインタビュー調査であり、そこに現れる「(継)子の利益」は、回答者である継親・実親から見た「(継)子の利益」観を映したものに過ぎない点に関わる。つまり、継子自身の意見が反映されておらず、これを補う基礎資料を欠いたままでは、検討は部分的なものにとどまらざるをえないと考えた。 もう一つには、当初の予定では、平成24年度に養子法研究を行った上で、次年度にその他監護法制の研究へ進むという順序を計画していた。その養子法研究の位置づけは、その他監護法制の研究の前提としてのものであった。しかし、実際には、養子法とその他監護法制とは相互に密接に関連したものとして、養子法の研究をまとめるためには、その他監護法制の検討を踏まえる必要があると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、英国法における継親子関係の法的規律をめぐって、養子法・その他監護法制の双方の研究に取り組む。 研究の順序であるが、当初計画では、養子法研究をまとめた上で、その他監護法制の研究へと進む予定であった。しかし、【現在までの達成度】に記載の通り、養子法の研究は、その他監護法制の研究と有機的に連関するものとして、両者を相互に行き来しつつこれを進める必要があると考えた。そこで、平成25年度は、英国法における継親子関係の法的規律をめぐって、養子法・その他監護法制両方について、並行的に検討を加えていくこととする。 また、資料収集について、平成25年度に、専任教員就職に伴い所属機関を移転したところ、データベースが一部不十分となった。そこで、これを補うため、母校の図書館等も積極的に利用する他、英国での資料調査を行うことも検討している。
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