研究課題/領域番号 |
24830103
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研究機関 | びわこ成蹊スポーツ大学 |
研究代表者 |
武井 哲郎 びわこ成蹊スポーツ大学, スポーツ科学部, 助教 (50637056)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 市民による教育事業 / 支援 / 個別性 / ボランティア / 親の会 / 教育的ニーズ / 教育課程特例校 / 特別支援教育 |
研究概要 |
本年度は、ミクロな視点から「市民による教育事業」が果たす役割や機能を分析するため、子どもに対する〈支援〉の難点と技法に、次の二つの視点から迫った。 第一に、障害のある子どもが「通常の学級」に就学できるよう、その条件整備を要求・実現してきた「親の会」を対象とする調査について、その結果をまとめ、子どもに対する〈支援〉の難点を明らかにした。子どもの教育的ニーズを把握できないなかで親だけが負担や責任を課されているような状況に対しては「親の会」として異議を申し立てることができるものの、子どもの学習や生活に直接の影響が及びうる問題については「親の会」として声を上げることが難しい。子どもの教育的ニーズは親であっても把握し難いことを踏まえたうえで、「市民による教育事業」が果たす役割や機能を議論する必要があると言える。 第二に、障害のある子どもが「通常の学級」で生活できる環境を整えるための〈支援〉を続けてきた親・ボランティアの活動について、調査を進展させた。発達の段階や障害の程度によって子どもからどこまでニーズが表出されるかは左右されるため、ニーズの同定と充足に際して、親・ボランティアには即興的な対応が求められる。親・ボランティアが〈支援〉に付随する葛藤や限界をどのように乗り越えているのか、二つの事例を比較しながら、検討を進めている。 その他、「市民による教育事業」が果たす役割や機能に迫るため、本年度は教育課程特例校制度を対象として調査を行った。教育課程特例校制度を活用して新設された教科の中には、親や住民の参加・協力を得ながら、実施されているものが存在する。今後、教育課程特例校制度の中で学校―家庭・地域がどのような連携を図っているのかを明らかにし、「市民による教育事業」を分析するための視座を得ることとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、障害のある子どもが「通常の学級」に就学できるよう、その条件整備を要求・実現してきた「親の会」を対象とする調査については、すでに論文として投稿を行い、査読の結果、掲載が決定している。子どもの教育的ニーズは親であっても把握し難いことなど、子どもに対する〈支援〉の難点に迫ることができた。 次に、障害のある子どもが「通常の学級」で生活できる環境を整えるための〈支援〉を続けてきた親・ボランティアの活動については、事例調査が完了しつつある。今後は、親・ボランティアが〈支援〉に付随する葛藤や限界をどのように乗り越えているのか、二つの事例を比較しながら論文にまとめ、子どもに対する〈支援〉の技法について考察を深めていく予定である。 その他、「市民による教育事業」が果たす役割や機能に迫るため、本年度は教育課程特例校制度を対象として調査を行ってきたが、現在までその成果は学会発表のなかで報告するにとどまっている。今後、教育課程特例校制度の中で学校―家庭・地域がどのような連携を図っているのか、積極的に論文にまとめ、「市民による教育事業」を分析するための視座を提示することとしたい。 以上、大きく三つの調査の進捗状況をふまえ、本研究課題の達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、第一に、〈支援〉の制度化を可能とするネットワークの諸相を明らかにするため、公的セクターとのパートナーシップに乗り出したフリースクールを対象とする事例研究を行う。このテーマは当初より平成26年度の研究実施計画に掲げていたものだが、本研究課題では、1990年代から不登校の児童・生徒が集う居場所を運営し、公的セクターとの対立も辞さずに多様な背景を有する子どもを受け入れてきたにもかかわらず、2000年代に入ってから公設民営のフリースクールを開設するに至った団体の事例に着目することにしたい。公設民営のフリースクールという全国的に見ても稀少な事例を対象とすることによって、安定性・継続性のある〈支援〉を実現するための道筋を見定めることとする。 本研究課題の今後の推進方策として、第二に、これまでの調査で得られた知見を積極的に論文にまとめていくことがあげられる。具体的には、1)障害のある子どもが「通常の学級」で生活できる環境を整えるための〈支援〉を続けてきた親・ボランティアの活動を対象とする事例調査をもとに、子どもに対する〈支援〉の技法について考察を加えること、2)教育課程特例校制度の中で学校―家庭・地域がどのような連携を図っているのかを検討し、「市民による教育事業」を分析するための視座を提示することが課題となる。
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