我が国では、自らの意思決定の表明が難しい知的障害のある人にとって親元以外の暮らしの選択肢は極めて乏しい。そこで、障害のある本人の居所を実際に決定している家族のインタビューをとおして、どのような要件があれば「親元からの自立」が可能になるのかを明らかにした。 前年度に実施したパイロットインタビューの分析結果を踏まえ、平成25年度は8名の家族を対象にインタビュー調査を実施し質的データ分析を行った。得られた主な結果は次のとおりである。 ①家族は知的障害のある子を養育するプロセスにおいて多様なつながりをもち、さまざまな考え方に触れそれらを取り入れることで、親元でも入所施設でもない新たな選択肢を得るに至った。②家族は、親元から離れて暮らす子の様子を実際に見て知ることで、親子の関係性や親の役割を相対化する視点を得る。③家族は、家族ではない他者の支援を得て成長する障害者本人の姿を見ることで、障害者本人を「生きていく主体者」として捉える認識をもつ。 これらの分析結果の妥当性および結果の意義を検証するために、調査協力者とは別の障害者家族4名の協力を得て座談会を開き、そこでのディスカッションを映像収録した。さらに、本研究をとおして得られた体験談をできるだけ多くの人と共有することで、障害のある当事者やその家族や支援者が「親元からの自立」という具体的な選択肢を思い描きその実現に向かっていくことを意図し、ホームページをとおして体験談(インタビューを抜粋・編集したデータ)、研究結果、座談会の収録映像を発信した。
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