研究課題/領域番号 |
24830111
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
金城 亜紀 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (00636946)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | ABL / 動産債権担保融資 |
研究概要 |
本研究は、ABLにおける担保が、換価価値に加えて、金融機関と債務者である企業との情報・コミュニケーションの媒介という重要な役割を果たすことを、日米のプラクティスを比較することを通して、実証的に明らかにすることを目的とする。 アセット・ベースト・レンディング(動産・債権担保融資、以下「ABL」)は、在庫や売掛債権などの事業収益資産を担保とする、日本では比較的新しい融資手法である。ABLが一般的な融資手法として定着した米国では、その特徴として、担保を活用して貸手が与信管理に必要な情報を主体的に生産することが指摘される。ABLの重要な機能が、担保となった事業収益資産をモニタリングし、貸手が積極的に借手の事業の実態を把握することは米国では実務並びに銀行監督上の常識とされている可能性が高い。しかし、黎明期にある日本では、ABLにおける担保の意義を正しく認識せず、不動産担保と換価価値のみに求める傾向が強い。 本年度は、研究計画に従い米国における現地調査、国内外の研究者とのワークショップを含め精力的に研究活動を行い、成果を対外的に発表するなど予定通りの実績を実現した。とりわけ、3月に実施した米国ニューヨークでの調査では、財務省Office of the Comptroller of the Currency(OCC)はもとより、Citigroup、JPMorganChase等のリスク管理実務者から通常では得られない知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の通り、平成24年度の研究計画は概ね達成できた。①最新のABL研究についての研究資料の収集。日本銀行をはじめ、他大学及び研究機関(京都大学、東京大学、日本銀行など)における関連文献・データの収集を行うと共に、研究者と最先端の研究に関する議論、情報収集を行った。また、米国において、最新の研究動向を把握した。 ②米国での調査する内容、項目、分析手法の確立並びに実施。事前に入念な質問事項を作成し、あらかじめ面談相手に送付するなどの準備が奏功し、目的通りの成果が得られた。とりわけ、OCCより文書にてComptroller’s Handbook’(Accounts Receivables and Inventory Finance編)の詳細な解説を入手できたことは特筆できる。また、米国での当該分野における著名な研究者であるG.F. Udell Indiana University教授、P.GilesColumbia University教授らと直接会い、活発な意見交換を行った。 ③対外発表。日本価値創造ERM学会24年度第5回研究発表会(2013年9月21日実施)題目:「ABL (Asset Based Lending)と事業会社のリスクマネジメント」、日本金融学会2013年度春季大会報告論文(2013年2月6日採択)“Function of Collateral when Asset Class is Account Receivables and Inventory: A Comparative Analysis of Japanese and US Bank Inspection Manuals”において研究成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、着実に研究を進めることと致したい。特に留意する点は下記の通りである。 ①平成24年度において得られた研究成果を積極的に英文で対外発表。そのための媒体として、日本価値創造ERM学会・学会誌(JAVCERM Journal)に投稿した原稿をフォローする他、日本金融学会の春季大会(5月)で報告発表する。加えて、秋にこれらの学会さらには九州経済学会にて発表し、年度内に査読付き論文を計2件投稿、掲載の運びとしたい。 ②米国での現地調査の実施。同国での動産・債権担保融資の実態把握並びに分析手法の確立を引き続き行う。先般の訪米でregulatory risk management関係者から有益な情報が得られたことを基盤に、credit riskに関する実務家に調査を拡大してきたい。また、当該分野で先進的な研究を続けているGreg Udellインディアナ大学教授などとの意見交換も引き続き継続したい。そのため、1~2回をめどに訪米し、フィールドワークを行い、文献等に基づき当方が立てた推論を検証する。 ③日本での現地調査の実施。地方銀行の協力を得て、ABLの実務が現状どのように行われているかの調査を行いたい。具体的には、融資現場におけるモニタリングの実態を把握することを通して、我が国における動産債権担保融資の課題を明確にする。
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