研究課題/領域番号 |
24830115
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
前村 奈央佳 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (50632238)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 国内移住 / 異文化適応 / 沖縄 / 感情曲線 |
研究概要 |
【研究目的】 本研究の目的は、移住者の移住動機のパターンを解明し、コミュニティの移動に伴う適応過程を異文化間心理学的に検討することであった。ここでは特に、沖縄県における移住者に焦点をあてた。 【方法】上記の目的に際し、まずは探索的に移住者に対する聞き取りを実施することとした。数名に対して予備調査を実施した後、スノーボール・サンプリング形式で県外出身の沖縄在住者を募り、21歳~66歳の成人26名(男性20名/女性6名:平均年齢33.46歳, SD=10.87)から調査の承諾を得た。沖縄での平均居住年数は6.08年(SD=3.85)であった。沖縄県在住かつ調査のトレーニングを受けた調査員3名が半構造化面接法を用いて聞き取りを行った。質問内容は、沖縄移住のきっかけや動機、来沖前・来沖直後・現在の沖縄イメージなどであった。なお、時系列に沿った感情状態を把握するため、沖縄移住前後(過去)、現在、将来を横軸にとった感情曲線を描かせ、波形の起伏の大きい箇所のライフ・イベントを中心に聞き取りを行った。 【結果】分析の視点として、移住のきっかけ・動機の類型化を試みた。「就職」「転勤」「起業」「進学」などは<ビジネス・勉強型>と考えられた(9件)。また、「沖縄出身の家族の希望」「家族の都合」「結婚」などの5件を<同伴型>とした。以上は異文化間接触に関する先行研究と同様のカテゴリーである。その他、「離職し、のんびりしようと思った(30代男性)」「失恋して、気分転換しようと思った(20代男性)」「全部リセットしたかった(30代女性)」など、ネガティブな出来事をきっかけに、本土から地理的に遠く、美しい海と温暖な気候を求めて訪れ、その後定住したパターンが散見された(6件)。これらは<逃避型>とした。その他は、上の類型の複合型とみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備調査の結果を踏まえて、インタビューの実施者(調査者)のスキルと、調査協力者の人数を再検討した上で、調査の一部を翌年度に繰り越した。そのことが功を奏し、より多くの年代や社会的背景をもつ移住者から調査協力を得てデータを収集することができた。本研究の主目的の一つ「移住者の移住動機パターンの解明」については、この時点である程度達成できたと考えられる。 ただし、質的データを多く収集できたことにより、分析には当初の予定より時間がかかる結果となった。また、インタビュー調査の結果、調査協力者それぞれの感情曲線の波形と移住前後のヒストリーを詳細に分析することも、移住動機の解明にとって重要であると考えられた。そこで、当初の予定に若干の変更を加え、次年度に予定している量的調査と、質的調査の結果の分析は並行して進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、今年度実施した「県外からの移住者の移住動機と沖縄県への適応に関する質的調査」について、特に個々の調査協力者により焦点をあてた内容分析を行う必要がある。 その後、分析結果を踏まえて「移住者の沖縄県への適応に関する量的調査」の計画・実施に進む。当初の予定では、質的研究で得られた移住動機と適応のパターンを選択肢に組入れるとしていたが、移住動機のうち、「なぜ移住地(この場合は沖縄)を選択したのか」についてのより詳細な検討が必要だと考えられたため、自由回答の形式に変更した。そのほか、移住者に対しては沖縄文化の受容レベル、沖縄における社会的ネットワーク(親しくしている友人の数など)、地元の人々(沖縄県出身者)への態度(行動意図・イメージ)と心理的距離、「私にとっての沖縄」「出身者に対して思うこと」(自由回答)を調査項目とする。 通常の質問紙調査では、県外出身の沖縄在住者(つまり、移住者)を抽出することが難しいため、量的調査は調査会社に依頼し、沖縄県内在住のモニターに対してweb形式の調査を行う予定である。
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