本年度は次の2種類の研究を実施した。 【研究1:沖縄への移住者調査(質的調査)】 昨年度実施した面接調査によって得られた移住動機のパターンと、適応過程との関連性について検討した結果、「ビジネス・勉強型」などの明確な目的を伴って移住した者ほど感情曲線の起伏が激しく、移住後に深刻な不適応状態を経験する傾向があることなどが明らかにされた。次に、適応プロセスについて移住者のソーシャルキャピタルの観点から検討した。その結果、移住者は、沖縄のコミュニティ内での社会参加、ネットワークの形成など、ソーシャルキャピタルを獲得していくことで適応を促進させることが明らかになった。また、移住者が形成するウチナーンチュ(沖縄人)とのネットワーク・本土出身者とのネットワークには適応における機能に違いがあることが示された。 【研究2:沖縄への移住者調査(量的調査)】 研究1の結果を踏まえて「移住者の沖縄県への適応に関する量的調査」を計画・実施した。沖縄への移住者を一定数スクリーニングするため、調査会社への登録モニターを調査対象とし、web形式で質問紙調査を実施した。調査項目は、適応感、被受容感、沖縄文化の受容レベル、沖縄へのアイデンティティ、沖縄における社会的ネットワーク(親しくしている友人の数など)、地元の人々(沖縄県出身者)への態度、人生満足度などであった。業者によるスクリーニングの結果、15歳~75歳までの412名の回答を得られた。分析の結果、移住者の適応促進には「ソーシャルキャピタルの獲得」「沖縄アイデンティティの向上」「被受容感」が関連している傾向がみられた。また、居住年数によって適応に必要なネットワークが変化する傾向がみられた。居住年数が長くなるほど(10年以上)、本土出身者とのネットワークから、ウチナーンチュとのネットワークへと重要性が変わっていくことが明らかになった。
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