研究課題/領域番号 |
24830116
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
安田 傑 関西学院大学, 文学部, 助手 (40631966)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | ロールシャッハ / 眼球運動 / 妥当性 / 投映法 / 色彩反応 |
研究概要 |
本研究の最終目的は、色彩反応を情動と関連づける解釈の根拠となる、知覚的メカニズムの解明である。この目的のために、眼球運動測定に関する機器の購入と設定を行い、実際に大学生37名からロールシャッハ法の反応と、反応産出時の眼球運動データを収集した。また、ロールシャッハ反応の領域について評定者間一貫性の検討を行い、十分な信頼性を有していることが確認された。 その後、ロールシャッハ反応が産出される前後の眼球運動について、反応領域との対応関係の分析を行った。その結果、反応領域を注視するのは主に反応前の約3.5秒から反応産出開始時までであり、その前後の時間帯は反応領域への注視傾向が低下することが確認された。加えて、左右領域を用いた反応と片側の領域だけを用いた反応とで、反応産出時の領域注視に差は見られないことが確認された。 この結果は、反応産出過程の分析の際に焦点を当てるべき時間帯と領域を特定したことを意味しており、本研究の目的を達成するために必要な情報であるとともに、本研究以外でもロールシャッハ反応の産出過程に関する様々な研究において有用な知見であると言える。 なお、反応段階における注視領域と、質問段階で説明された領域とが対応していない反応もわずかながら見られた。この原因として、反応段階と説明段階との間に数十分の間隔があいており、そのために記憶が曖昧となってしまうことが挙げられる。この知見は、ロールシャッハ法において、健常な大学生においても反応の忘却があり得ること、そして質問段階において当初の反応とは別の反応が構成され、説明が行われてしまう可能性がある事を示している。 これまでに得られた知見についてはまだ発表されていないが、平成25年度中に国内学会での発表を2回、平成26年度に国際学会での発表を1回実施するとともに、国際学術雑誌へ論文を1本投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では当初、平成24年度の間に、色彩反応と非色彩反応とで眼球運動の比較を行う予定であった。しかし、色彩反応か否かに限らず、反応段階での注視領域と質問段階での説明領域が対応していないことが明白な領域がわずかに存在した。そのため、注視領域と説明領域の対応性について約700反応について個別に精査を行う必要が生じ、当初の予定より遅延したものである。なお、この精査の結果、大部分の反応に対応関係が見られ、今後の研究を遂行する上で問題のないデータであることが確認されている。 加えて、反応のテープ起こしに当初想定した時間の約3倍の時間が必要であった。具体的には10分間のやり取りをテープ起こしするのに、約1時間要した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、色彩反応の該当・非該当と注視領域の対応について分析する。これに加えて、同時にFC・CF・Cと注視領域の対応、そして反応の定型性と注視領域との対応についても分析を行うことで、研究のスピードアップを図る。
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