研究課題/領域番号 |
24830123
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研究機関 | 高田短期大学 |
研究代表者 |
寳來 敬章 高田短期大学, その他部局等, 助教 (80638114)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | チャータースクール / 教育の民営化 / 学校選択 |
研究概要 |
平成24年度における研究成果は、以下の通りである。 ①アメリカ教育学会第24回大会にて、「チャータースクールをめぐる学校選択の構造―自律化のパラドクス―」を発表した。チャータースクールは学校選択の自由化を推進することでこれまで劣悪な環境の学校へ通うしか選択肢がなかった子どもや家庭が、よりよい環境を求めて学校選択行動が活性化されることが大きな狙いとされている。本発表は実際にどのようにして学校選択がされているのかだけでなく、どのような子ども、家庭が選択できない(入学できない)のかについて検討した。既存の学校とは異なり自律的な学校運営が可能となるチャータースクールであるがゆえに、人気がある学校であるほど自分たちの都合の良い子ども、家庭を「選抜」する傾向があることと、それが制度的に隠蔽されてしまうことが正当化される可能性を指摘した。 本研究において学校選択をめぐる構造として主たる分析の対象として位置づけたのは、「誰の選択が実現していないのか」という問いである。結果として入学希望をしたにもかかわらず、希望がかなわずに他の学校へ行くことを余儀なくされた家庭は、待機者リスト(ウェイティング・リスト)に記載され、子どもの該当学年の空きが出るのを待ちながら違う学校へ通うことになる。このリストに記載されている家庭の数がその学校の一つの評価になる。本研究で事例として分析したチャータースクールは、ウェイティング・リストに記載されている家庭は多数あり、多くの家庭に支持されていることは確認できる。そして同時に、学校運営における自律的機能の弊害として遠方から学校へ通うといういわば政策意図通りの学校選択行動をとる家庭こそが排除の対象となりうる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究費申請の時点では海外調査が計画されていたものの、実施が出来なかった。大きな要因の一つとして所属機関の研究倫理規定の改訂が行われ、研究に係る調査の手続きが滞ってしまったことが挙げられる。 また、当初の研究計画段階で海外調査として設定した長期休暇中に、校務として教育・保育実習巡回指導や入試業務に携わることとなり、海外調査の計画・実施が困難となってしまったことも一つの要因として考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究目的を達成するためには、海外調査が不可欠である。 前年度中に海外調査を実施する予定であったが、実施が出来なかったため、本年度に海外調査を実施し、データの収集をすることとする。それが困難な場合は、電子メールでの情報収集なども視野に入れて実施する必要があると考えられる。調査対象は申請者がこれまで訪問したチャータースクールに加えて、外部組織への訪問を予定している。主にインタビュー調査と質問紙調査を実施し、質的手法と量的手法併用することで研究を進めることとする。 具体的には以下のように本年度の研究を進める。 ①「公‐私の連携」について、どのように学校との関係が構築・維持されているのかを把握する。チャータースクールにとっては学校運営上必要な物的・人的・経済的資源を外部組織から購入したり寄付を受けたりすることが多い。具体的にどのような分野に対して外部から資源を獲得しているのか、どのように利用されているのかを中心に議論することで、チャータースクールが外部組織のどのような関係で学校運営がなされているのか検討する。 ②次に、外部組織に着目した調査を実施する。学校運営に関わる機関や組織(外部組織)は、チャーターマネージメントオーガニゼーションなどと呼ばれており、現在では部分的な資源の売買や提供だけでなく、学校運営の意思決定など中心的な役割を担うようになってきている。そこで、外部組織にとって、チャータースクールと連携する(学校に資源を売る、寄付するなど)の行動がどのようなメリットとなりうるのかを検証する必要がある。 チャータースクールと外部組織両者の立場から、資源をめぐる関係性を検討することで、学校運営や日々の教育実践が本当に効率的になるのかという点を描き出す。そして、民営化すれば効率性が高まるという言説に対して、実証的なデータを示しながら、教育の民営化の可能性と限界を示す。
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