研究課題/領域番号 |
24830124
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
呉屋 淳子 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (10634199)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 伝統芸能 / 高等教育機関 / 文化的アイデンティティ / ライフストーリー / 二重的な教授 |
研究概要 |
1)沖芸の琉球芸能専攻を在学または修了した若手芸能実践家のライフストーリーから現代沖縄の伝統芸能の継承に関する実態の分析を行った。その際、沖芸の琉球芸能専攻を修了した若手芸能実践家のライフストーリーから学習者が「継承の主体」となっていく様子に着目した。本研究のキーインフォーマントの協力を得て、「研究所」での活動、「研究所」の師匠を交えてのインタビューを行うことができ、彼らが歩んできた芸能人生においてどのように芸を学習し、そして継承者としての自覚を身につけてきたかについて具体的な継承の実態を明らかにした。 2)「研究所」と高等教育機関は、教育形態や継承内容が異なるものの、沖芸に在学または修了した若 手芸能実演家らはこの双方の場において芸を磨いた経験を持っている。1)で明らかになったことを踏まえ、それぞれの場における教授の特徴を明らかにし、公的な教育機関で伝統芸能を「教育する」という行為が及ぼす影響について検討した。その成果は、2013年1月の国立歴史民俗博物館で開催された共同研究会で発表した。 3)「伝統」と「創造」のはざまで揺れ動く彼らの伝統芸能の継承をめぐる取り組みと実践の再帰的関係を考察した。その結果、彼らの「二重的な教授の経験」、つまり、従来の修練の場である「研究所」に加え、高等教育機関において芸能を修練は「沖縄らしさ(Okinawaness)」をいかに表現するかという問いに向き合う切っ掛けとなっていた。また、このような経験は、沖縄人としてのアイデンティティを再考する機会ともなっており、芸能を「創造」することにも繋がっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若手実演家へのインタビュー調査は、計画通りに進んでおり、キーインフォーマントとの人間関係も良好である。今後も聞き取り調査自体をインタビュアーと回答者との 「協同作業」であるという点を踏まえ調査を進めている。無論、彼らが現在も徒弟制のなかで芸を修練し続けていることから、インタビューにあたっては調査対象者のプライバシーや両者の関係に 対して不利益を及ぼさないよう細心の注意を払う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、沖縄県や沖芸、国立劇場おきなわの事業等に関する文化行政の文書資料の収集に当たっては、 それらの事業に携わった関係者からも聞き取り調査を行い、関連資料と照合することで、包括的に 把握するように努める予定であったが、内部の担当者の変更等により、途中中断があった。しかし、新たに劇場側の関係者から協力を得ることができ、今後も継続して資料調査を行う予定である。
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