1)沖縄県立芸術大学の琉球芸能専攻を修了した芸能実践家のライフストーリーから現代沖縄の伝統芸能の継承に関する実践について分析を行った。現在、大学で教授活動に関わる芸能家を対象にインタビュー調査を行い、彼らが歩んできた芸能人生においてどのように芸を学習し、そして継承者としての自覚を身につけてきたかについて具体的な継承の実態を明らかにした。「伝統」と「創造」のはざまで揺れ動く彼らの伝統芸能の継承をめぐる取り組みと実践の再帰的関係を考察した。その結果、彼らの「二重的な教授の経験」、つまり従来の修練の場である「研究所」に加え、高等教育機関において芸能の修練は、「沖縄らしさ(okinawaness)」をいかに表現するかという問いに向き合うきっかけとなっていた。また、このような経験は、沖縄人としてのアイデンティティを最高する機会ともなっており、県内外での創作舞台を創り上げる過程でその様相が顕著に現れていた。 2)琉球芸能を学ぶことを目的に沖縄県立芸術大学に在籍する留学生(日系人)へのインタビューを通して、沖縄県内の三線・舞踊「研究所」と移民先の沖縄県人会を中心とする稽古場との関係性について明らかにした。特に、母県の「研究所」と南米(ペルー)の稽古場は、教育形態や継承内容が異なるだけでなく、移民先の稽古場では、母県の「研究所」あるいは沖縄県立芸術大学で芸能を修練することが芸道を極める上で必要条件の一つであると認識されていた。
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