研究課題/領域番号 |
24830126
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
吉田 沙蘭 独立行政法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 心理療法士 (70636331)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 小児がん / 心理社会的支援 / 家族 |
研究概要 |
本課題では、心理社会的ストレスが大きいと指摘される難治性小児がん患児の家族について、実行可能かつ有効な家族支援システムを構築することを目的としている。平成23年度までに行なった遺族調査の結果をふまえ、支援提供者としての医療者の視点を組み込むことでより、臨床現場の実情に即した支援方法を検討することが可能になるものと考える。 そこで平成24年度には、患児の終末期における家族支援の前提となる「病状に関するコミュニケーション」について、医療者を対象とした面接調査を実施した。小児がん診療に携わる医療者10名を対象として調査を実施した結果、成人患者の場合とは異なり、予測される予後、死の可能性、積極的抗がん治療の中止、といった内容について、患児本人に伝えることはごくまれであることが明らかとなった。そのかわりに、患児や家族の意向を把握し、希望を叶える関わりが多くもたれていることが示唆された。さらに、予後に関するコミュニケーションのバリアとして、「患児の認知発達や理解力の限界」、「患児に伝えることに対する親の反対」、「厳しい病状に対する親の理解不足」、「End of Lifeについて伝えるスキルがないこと」、「伝えることに対する医療者の心理的な抵抗」、「患児には伝えないのが当然という文化」といった要因が明らかとなった。 患児の看取り前後における家族支援のあり方を検討するにあたり、医療者、患者、家族の三者関係に大きな影響を与えるコミュニケーションのあり方について明らかにすることは有意義であると考えられた。今後、この調査の結果をもとに量的調査によってコミュニケーションや困難感の実態を把握するとともに、包括的な家族支援の実態について明らかにすることが期待される
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家族支援の実態について医療者の視点から明らかにするにあたり、コミュニケーションに関して、特に焦点を当て、詳細に検討することが重要であると考えられた。当初は遺族調査と同様の質問項目について医療者を対象とした調査を実施する予定であったが、遺族調査では扱わなかったコミュニケーションに関する項目を収集するための、面接調査を予備的に実施することが、最終的な成果を得るために有用であるものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、遺族調査および予備調査から得られた結果をもとに、病状に関するコミュニケーションの実施や負担感の実態を明らかにするとともに、支援の提供者である医療者側の視点から、実現可能性をふまえた支援の提供体制について、施設の規模別に明らかにすることを目的とした以下の調査を実施する。 対象は、小児がんの治療に従事する医師および看護師とし、小児がん診療を行なう全国の施設が加盟する研究グループを介し、郵送による全国質問紙調査を実施する。まず、小児がん治療を行なっている全国の施設に調査用紙を郵送する。各施設において、適格基準を満たす医師および看護師に調査用紙を配布する。記入済みの調査用紙は回答者が直接研究者に返送する。主な調査内容として、病状説明に関する調査項目は、①説明実施の有無、②説明にともなう負担感とする。家族支援の提供に関しては、遺族を対象とした調査から得られた医療者に期待される支援内容の各項目について、①現在の支援提供の有無、②支援提供の必要性を問うとともに、支援提供の障壁について質問することとする。得られたデータから、説明の実態および負担感について、施設の規模別に記述統計を得る。期待される支援の各項目に関しても、同様に支援提供の有無について記述統計を得る。また規模による支援の提供状況に差異があるかどうかχ二乗検定により検討する。さらに、支援提供の必要性、障壁についても、施設の規模別に集計し、記述統計を得る。 なお、上記調査の結果についてレビューを受け、コンセンサスを得ることを目的とし、小児がん患児遺族を対象とした個別面接調査、および小児がん治療のエキスパートを対象としたフォーカスグループを実施する予定である。
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