本研究では,星間分子雲における化学進化で重要な役割を担う星間塵表面反応による,アミノ酸の重水素濃集に関する研究をおこなった。もっとも単純なアミノ酸であるグリシンを超高真空反応チャンバー内に設置した反応基板(12K)に蒸着し,重水素原子と反応させた。FTIRやNMRで反応生成物を分析したところ,グリシンの重水素置換体の生成が確認された。反応には高い活性化エネルギーが存在するため,極低温での重水素置換体生成には量子力学的なトンネル効果が重要だと考えられる。本研究では,アミノ酸が星間分子雲における極低温表面原子反応によって重水素濃集可能であることを示した。
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