研究課題/領域番号 |
24840002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 亮吉 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (80629759)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 大域解析学 / グラフ / 離散群 / ランダムウォーク / スケール極限 |
研究概要 |
今年度は、3次元可解Lie群とその離散部分群上のランダムウォークについて、研究を進めた。Lie群や離散群上のランダムウォークの無限遠での挙動について、従順かつ体積増大度が指数的な群の場合、ランダムウォークを定義するステップ分布により挙動が著しく変化することが知られている。我々は無限遠境界上定義される調和測度の振る舞いについて詳細な研究を行った。我々の扱っている場合、境界には実数直線が現れる。有限サポートを持つステップ分布に対応する調和測度とサポートが生成する有限生成無限部分群の関連について調べた。この研究とともに双曲群のケーリーグラフ上のパーコレーションに現れる無限クラスターの幾何学的構造について、確率論、エルゴート理論の手法を援用して研究を行っている。これは非従順群のケーリーグラフ上の群作用不変の分布を持つパーコレーションの研究である。これらが無限クラスターを確率1で持つとき、そのクラスターの幾何構造について、ある種の類似性から、可解群のケーリーグラフと比較しながら研究を進めている。これらの無限クラスターは、ケーリーグラフのように対称性の高い無限グラフではないグラフについて、その幾何構造をランダムウォークとの関連から詳細な研究を進めるのに、ある一定のクラスを定めていると考えられる。一方で、流体力学的極限で扱われる粒子系をグラフの被覆の塔で定義し、局所エルゴート定理と呼ばれる極限定理について研究を行った。被覆グラフの塔が有限生成従順かつ残余有限の群から得られるものに対しては、局所関数束を用いた定式化により局所エルゴート定理が成り立つことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画を進めるうちで、思わぬ副産物が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)非従順グラフのパーコレーションの無限クラスターは、確率1でチーガー定数が0で、体積増大度が指数的であることから、離散群における従順かつ体積増大度が指数的である状況における研究と比較しながら進める。そのため、可解Lie群上のランダムウォークとその無限遠での振る舞い、特に無限遠境界に現れる調和測度を詳しく調べる研究を行う。 (2)結晶格子上の流体力学極限において、これまで得られた結果をもとに大偏差原理を考察し、次のステップである非勾配系の解析を行う準備を行う。また、モデルをより一般の群作用のあるグラフに拡張する研究を行う。 (3)閉リーマン多様体の双曲曲面への埋め込みの理論の離散類似を考察することから進める。とくに有限グラフの最適配置の特徴付けを連続の場合のTeichmuller理論との関連を参考にして研究を行う。
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