研究課題/領域番号 |
24840006
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹下 基生 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70452422)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | トポロジー |
研究概要 |
今年度はスライスリボン予想に関する基本的な考察をした。ある結び目がスライス結び目である場合、その結び目が誘導する4次元球体のハンドル分解とその中の結び目のある性質を証明した。これにより当予想は、ある特異点集合がなす平面図式がある操作により単純な形に変形することができるかどうかという問題に帰着された。本研究では特異点集合の数が少ない場合において結び目の実現不能性について論じることができた。これらは安部哲哉氏との共同研究である。 山田裕一氏との共同研究で、トーラス結び目とBergeのタイプVIIおよび、VIIIが同時に同じレンズ空間を得る場合において、そのような結び目のペアを全て見つけることに成功した。そのために2次体の整数論を用いた。このようなペアから作られる閉4次元多様体は全て標準的な微分構造を持っていることも分かった。また、トーラス結び目同士の場合の結果が論文として出版された。 手術によってレンズ空間を持つための必要十分条件を得るために連分数展開を用いた議論をしてきたが、その分類の第一段階をクリアした。これにより、これまで仮定してきた条件がレンズ空間手術という前提条件からえられることが分かった。これらのことを研究集会「The 9th East Asian School of Knots and Related Topics」で発表した。 以前4次元多様体のプラグとして無限位数をもつものを構成したが、この構成を一般化し、拡張した。その結果、あるグラフを用いた手術として全ての結び目手術を構成できることが分かった。また、結び目の局所変形をしてできる結び目手術同士もあるグラフ補空間の手術として実現できることがわかった。 ポアンカレホモロジー球面がL-spaceザイフェルト多様体を作る無限族を構成し、日本数学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
レンズ空間手術の問題を解決させるために重要なことは結び目のアレクサンダー多項式の条件のうち、flatとalternatingの条件を両方使うことでレンズ空間の制限を得ることであった。昨年度までの研究で、このflat性から得られる条件をまとめた。 本研究のSeifert多様体手術に関する研究はそのアレクサンダー多項式を計算するところから始まるが、L-space Seifert多様体を作るために必要なアレクサンダー多項式の条件をえた。 4次元多様体全体をある基本的なコルクで生成することが目標である。結び目手術があるプラグで得られることが分かっていたが、そのプラグツイストを一般化する方法を考察した。またある結び目の局所変形でにより得られる4次元多様体同士の間の関係をある部分多様体の切り貼りによって得られることが得られる。一般にこれはプラグではない。それらの違いをコルクもしくはプラグにする必要がある。 山田裕一氏との共同研究では、トーラス結び目とタイプVII、VIIIの結び目の間に同じレンズ空間を得るものを全て探し出し、できる4次元多様体は全てスタンダードであったが、このような構成から2つのCP2の連結和に埋め込めるレンズ空間の例を増やすことに対応する。これによりエキゾチックな定値な4次元多様体の研究の基礎的結果となる。 スライスリボンの研究は大幅に進んだ。スライス結び目一般に対して、あるリボン結び目の特異集合の拡張するような図式を構成することができたからである。問題はこの図式がどのような場合にリボンになるかを考察すればよい。安部哲哉氏との共同研究ではアニュラスツイストをしてできる結び目の手術で得られるホモトピー4球面についてスライス性も証明した。ある場合にこのスライス結び目らリボン結び目であることが分かった。この手法を一般化し、我々が得たスライス図式についても適用させる。
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今後の研究の推進方策 |
レンズ空間の分類において現在のflat性による分類から引き続きalternating性についての条件をみることが必要である。その一部は証明済みである。その条件を適用させるために、ある2次元格子上にアレクサンダー多項式の係数をおく。そのnon-zero係数のy座標同士をみることでalternating性について論じることができる。その議論を続ける。 またこの分類の前に、以前考察していたアレクサンダー多項式の2nd non-zero係数に関する考察で得られた結果が、上記の手法で分類出来ることが分かったのでそれについてまとめ、論文にする予定である。 L-spaceザイフェルト手術に関してそのアレクサンダー多項式を計算したが、そこから、具体的に求める手法はまだ開発していなかった。レンズ空間の手法を適用する予定である。 4次元多様体のエキゾチック多様体におけるコルクやプラグを探す。現在、アクメドフによるエキゾチックな多様体におけるコルクを探している。そこで得られるコルクとしてシンプルなものを探す。このような例を多く増やすことがこの研究の当面の課題である。また、メイザー多様体のフレアホモロジーを計算する。 スライスリボン予想に関しては今後、特異集合の図式に関する既約性を証明する。この仕事は直接スライスリボン予想の解決につながる。その前に、アニュラスツイストが作るホモトピー4球面がいつもスライス結び目を作ることが証明する。これはFishtail近傍上のログ変換で記述できるはずである。 4次元多様体に関しては、8月にミネソタ大学の研究集会に参加し、アクブルト教授と議論を再開する予定である。また、マックスプランク研究所の研究集会に参加し、Broken Lefshcetz fibrationについての知識を得る予定である。スライスリボン予想に関しては、安部哲哉氏との研究を引き続き行う。
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