研究課題/領域番号 |
24840007
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中島 誠 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60635902)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 測度値確率過程 / SPDE / ランダム環境中の分枝ランダムウォーク |
研究概要 |
人口の成長を記述する確率模型のひとつであるランダム環境中の分枝ランダムウォークの臨界点近傍での挙動に関連する研究を行った. 臨界点近傍の分枝ランダムウォークを解析する手段の一つとしてある種の極限であるスーパーブラウン運動と呼ばれる測度値確率過程の解析がある. そこで臨界点近傍のランダム環境中の分枝ランダムウォークの極限点として「ランダム環境中のスーパーブラウン運動」と呼べる測度値確率過程が構成することを試みて, これに成功した. さらにこの過程は時空間ホワイトノイズをノイズとして含む確率偏微分方程式(SPDE)を満たすことがわかった. そのSPDEは確率熱方程式と呼ばれ様々な研究がされている. つまり「ランダム環境中のスーパーブラウン運動」は確率熱方程式の解となる具体的な例であることが示された. またある種の強い初期条件の下で確率熱方程式の解の存在が知られていたが, 非常に弱い条件のもとでの解の存在も言えたことになる. この弱い条件のもとでの解の存在は他の形の確率熱方程式では示されているものが少ないので非常に重要なものであるといえる. 一方で解の一意性が言えていないためにまだ収束するのかどうかを示せていない点は問題であるので今後の課題にしたい. また解の一意性を言うためには非線形項の現れる確率熱方程式の解の存在を示すことになることを発見した. この形の解の存在と一意性が対応していることがわかったために、より広いクラスの確率偏微分方程式の研究への寄与が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨界点近傍におけるランダム環境中の分枝ランダムウォークのスケーリング極限が満たすべき確率偏微分方程式を導くことに成功したが, この確率偏微分方程式の解の一意性を示すところまでには至っていない点では遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
当初考えていた手法を適用することを試みる. 適用が困難であると判断した場合は別の手法について考察を行うことにする. 確率偏微分方程式の解の一意性に関する文献を参照することになる. また当初の予定通り極限過程を構成できたのでその性質についても考察を行っていく. さしあたっては極限過程のヘルダー連続性に関する考察を行う.
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