研究課題
ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外カメラWFC3で取得した撮像データを解析し,宇宙再電離期にあると考えられる星形成銀河の候補天体を同定した.当時の宇宙の星形成率密度を見積もり,その結果をまとめて論文として発表した.本研究では,Ultra Deep Field 12という新しい深宇宙探査プロジェクトにより取得されたデータを解析した. これにより,過去のデータでは見つけられなかった暗い星形成銀河を同定することが可能となった.また,明るい銀河も高い信号雑音比で検出することができるようになった. データの取得に先駆けて,多色の撮像データから遠方にある銀河を効率良く選び出すための色選択基準を決定した.データ取得後は,整約済み画像を解析して天体の多波長カタログを作成し,色選択基準をもとに再電離期にある銀河の候補天体を同定した.特に,整約した画像の解析や天体の検出,同定といった作業では,プロジェクトのメンバーと情報を共有して内容を議論・検討する必要があったため,約3ヶ月の間カリフォルニア工科大学に滞在して本研究に従事した.本年度は,赤方偏移zが8.5を越えるような特に遠方にある銀河の候補天体を7個同定し,それらをもとに当時の宇宙における紫外光度密度をこれまでにない精度で見積もった.その結果,宇宙の紫外光度密度は赤方偏移が大きくなるにつれて減少しており,その進化はz~5からz~8にかけての赤方偏移進化を外挿したものと大きく異ならないことがわかった.なお,今回同定した7個のうち1個は最も長い波長のフィルターでのみ検出されており,その赤方偏移は極めて高いと考えられる.ただ,単一のフィルターでの検出は,手前にある輝線の極めて強い銀河である可能性も示唆する.そこで,星の種族合成モデルに星形成領域からの星雲放射を組み合わせた計算を行ない,その可能性が低いことを示した.
2: おおむね順調に進展している
新たに取得したデータにこれまでのデータを組み合わせて,Hubble Ultra Deep Fieldにおける天体の多波長カタログを構築した.色選択基準をもとに,特に遠方にあると考えられる銀河の候補天体を同定して当時の星形成率密度を見積もり,その結果を論文として出版した.
本研究で同定した赤方偏移z>7にある銀河候補のカタログをもとに,当時の銀河の紫外光度関数を導出する.また,それらの物理的性質(紫外光でのサイズや紫外スペクトルの硬さ)を調べ, それらの観測結果をもとに宇宙再電離への示唆について議論する.以上の研究成果を論文にまとめて報告する.
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The Astrophysical Journal Letters
巻: 763 ページ: L7 (6pp)
10.1088/2041-8205/763/1/L7
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/2012/12/13040100.html