研究課題/領域番号 |
24840017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 久美子 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (30636858)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 古代地球ダイナモ / 古代火星ダイナモ / 内核成長 / 永年冷却 / コア・マントル熱的相互作用 / 古地磁気学 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
磁気流体力学的(以下 MHD)ダイナモ数値シミュレーションにより、古代地球または火星ダイナモでは、コア・マントル境界(以下 CMB)における熱的水平不均質構造がより大きな影響をもっていただろうことを明らかにした。 現在の地球コアのように内核の固化が進行しているとき、内核・外核境界(以下 ICB)から潜熱や化学的な軽元素が放出され、これが外核における対流やダイナモの主な駆動源となる(以下 ICB 駆動型)。一方、初期地球や火星のコアのように、内核成長が始まっていないときには、コア全球での永年冷却が主な駆動源となる。 このような駆動源の違いが及ぼす影響を評価するために、平成24年度は、マントル対流等によってコア表面に熱的な水平不均質性が生じている場合に注目した。様々な水平空間構造をCMBにおける熱的境界条件として仮定し、永年冷却型ダイナモの場合とICB駆動型ダイナモの場合でそれぞれ数値シミュレーションを実施、両者間のCMB熱的不均質性に対する応答の差異を調査した。それぞれのCMB水平空間構造の場合で、空間構造の定性的な観察を基にして、運動エネルギーにおける空間スペクトル、磁気エネルギーや軸双極子成分がもつ相対磁気エネルギー等を計測し、コア内の流れ構造、磁場強度や構造の変化を定量的に解析した。それらの変化率を比較した結果、永年冷却型ダイナモがより大きい変化率を示すことがわかった。これは、古代地球または火星型のダイナモの方が、CMB熱的水平不均質性に対してより敏感に応答することを意味する。 本成果は、コア表面に熱的不均質構造がある場合、内核成長の有無が本質的な差異を生むことを示すものであり、今後の古地磁気学や火星磁気学、熱史理論の各研究分野にわたるインパクトが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成24年度研究計画をほぼ達成した。その主成果を、共著者らとともに投稿論文としてまとめ、Planetary and Space Science 誌へ投稿した。また、国際学会 1 件 (13th symposium on Study of the Earth Deep Interior) においてポスター発表を行い、国際学会 1 件 (American Geophysical Union, fall meeting 2013) においては招待講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度における結果をうけ、CMB 不均質構造が ICB 構造または内核成長に対し及ぼす影響を調べる。 まず、永年冷却型ダイナモと ICB 駆動型ダイナモとで、どの程度、ICB における熱的水平不均性の見積もりに差異をもたらすかを評価する。下部マントルにおける地震波速度異常分布より推定される CMB 不均質構造を仮定し、ダイナモ数値シミュレーションを実施する。そして、ICB から放出される熱フラックスの水平分布を求め、永年冷却型ダイナモにおける値と ICB 駆動型ダイナモにおける値を比較する。ICB 駆動型ダイナモの場合は、仮定する基礎パラメータによって、より敏感に CMB 不均質構造の ICB への達しやすさが変化すると予想されるため、パラメータサーベイも合わせて行う。 次に、強磁場の存在がどのように対流構造やその配置に影響を及ぼすのかを明らかにする。このためには、非磁場下または強磁場下での対流(以下、磁気対流)に関する数値実験が有効である。MHD ダイナモでは self-consistent に流れ構造や磁場が決まり、それらのどの要素が主要原因であるかを特定することが難しいためである。磁気対流についての数値実験では、双極子型の磁場をある強さで外的に与え、その強制磁場の強さに対する流れ構造やその空間配置の変化を明らかにする。その流れ構造は、運動エネルギー、空間スペクトルにおける卓越波数、空間構造の時間的変化を調べることで、特徴づけていく。このようにして磁気対流の性質を明らかにした後、MHD ダイナモにおける結果と比較し、外核内の対流構造と ICB 不均質構造がCMB不均質構造に対してどのように配置している可能性が高いかを評価する。
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