研究概要 |
本年度は以下の項目について研究を行った。 (1)向き付け不可能曲面のレベル2写像類群の生成系とアーベル化、(2)トレリ群における森田-Mumford類の非自明性,(3)ハンドル体写像類群の2次ホモロジー群,(4)曲面の基本群の有理群環を係数にもつトレリ群のコホモロジー群。 (1)は、トレリ群がジョンソンフィルトレーションの1番目の部分群であるのに対して、modulo 2のジョンソンフィルトレーションの1番目の部分群である、レベル2写像類群に関して得られた結果である。廣瀬進氏(東京理科大学)との共同研究として、modulo 2 Johnson準同型をレベル2写像類群上に構成し、これを用いてこの群のアーベル化を決定した。またSzepietowskiにより与えられた生成系を改良し、生成系として最小個数のものを1つ与えた。 (2)については、(i,j)-森田-Mumford類がトレリ群で自明であれば、(i,j+1)-森田-Mumford類も自明であることなど、いくつかの基本的事実を整理した。また、トレリ群における3-サイクルの構成を試みたが、非自明なホモロジー類は得られていない。 (3)については、ハンドル体写像類群がハンドル体に埋め込まれた円板のなす複体へ作用することに着目し、この同変ホモロジーに関係するスペクトル系列の微分を計算した。 (4)については、自由群の自己同型群について、自由群の有理群環係数のねじれ1次(コ)ホモロジー群、および群環に自由群の1次ホモロジー群をテンソルした係数のねじれ1次ホモロジーを計算し、これらがすべて自明であることがわかった。また、曲面の基本群の群環を係数とする写像類群のコホモロジー群と、森田-Mumford類との関係を調べた。
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