今年度の研究では、指数型非線形項を含む種々の非線形熱方式を扱うための研究を行った。前年度の研究で、拡散係数が十分に小さい場合の研究の重要性を認識することができ、実際に境界爆発解の非存在への応用が可能であることが明らかとなった。そこで、種々の非線形熱方程式の爆発問題を扱うための手がかりとして、一般の非線形性を有する非線形熱方程式の拡散係数が十分に小さい状況下での爆発問題を研究した。特に、拡散係数が十分に小さい場合には解は初期値関数の最大点近くでのみ爆発することが分かった。 一般の非線形熱方程式を扱う上で困難となるのが、スケール性の欠如である。冪乗型非線形項や指数型非線形項などの特殊な形を除くと、一般の非線形熱方程式を扱うとき、方程式に対するスケール不変性が失われ、爆発問題の解析が困難となる。そこで本年度の研究では、冪乗型非線形項および指数型非線形項を持つ熱方程式に対する解のスケール変換を参考にし、一般の非線形熱方程式に対するスケール変換を導入した。当然のことながらスケール不変性は期待できないため、方程式の形は変わってしまうが、実際に拡散係数が十分に小さい状況を考えている上では、その変化は解析に影響を与えないことも分かった。本研究の特筆すべき点は指数型非線形項を持つ熱方程式を扱える点であり、冪乗型非線形項とは本質的に異なる方程式を扱うことができた点である。これにより、今後の研究の更なる進展が期待できる。主な手法は比較原理であり、適切な優解および劣解を構成することである。
|