圧縮粘性流体のBurgers渦と呼ばれる渦管構造の簡単な数理モデルについて研究することは、乱流といった典型的な気象現象の数理構造を解明する上で重要である。ところが、代表者が調査した限りでは、非圧縮粘性流体におけるBurgers渦の明示解やその漸近安定性などの結果は存在するものの、圧縮粘性流体については数学的な先行研究が無かった。この状況から進展するために、非圧縮粘性流体のBurgers渦を踏まえ、代表者は圧縮粘性流体のBurgers渦が満たすべき明示解を求めた。特に、密度の明示解を求めることが最も重要になるため、流体がバロトロピックである場合とそうでない場合の双方を考えた。 まず、流体がバロトロピックである場合は、圧力を密度の冪関数とし、密度を原点・質点間の距離のあるオーダーの関数によって表した。一方、流体がバロトロピックでない場合は、圧力を密度と速度によって表される運動エネルギーとし、密度を定数によって表した。このように、Burgers渦が満たすべき明示解を求めることは圧縮粘性流体のバロトロピー性の有無を決めることを意味するので、細心の注意を払いながら研究を実施した。 成果は、圧縮粘性流体のBurgers渦を研究する上で、バロトロピックでない場合を考えるのが自然であると判明したことである。この成果を踏まえ、代表者はバロトロピックでない圧縮粘性Navier-Stokes方程式の数学解析について研究しようと試みている。
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