研究課題
太陽系初期から現在に至るまで地球や火星では幾度となく隕石や小惑星の衝突が生じてきた。天体衝突は太陽系の歴史に多大に寄与しており、たとえば初期地球の形成に関係するジャイアント・インパクトや後期重爆撃期における隕石郡の衝突と生命誕生、さらには白亜紀における生物大量絶滅などが挙げられる。最近ではイトカワの分解・集積過程やロシア、チェリャビンスク州へ落下した隕石など天体の衝突現象が注目されている。これらを紐解く上で衝突の際の圧力を評価することは重要であり、これまでに様々な分析手法を用いて圧力推定がなされてき。しかし、従来の手法では高空間分解能かつ非破壊で圧力を定量評価することは難しく、そのため実際に適用された例は少ない。カソードルミネッセンス(CL)は物質に電子線を照射した際に生じる発光現象であり、隕石に普遍的に存在する長石の発光特性は衝撃圧力に依存することが知られている。本研究では一段式火薬銃を用いた衝撃実験試料のCL測定を行い、発光特性の定量化から汎用性および精度の高い衝撃圧力推定法の確立を試みた。本年度は、独立行政法人物質・材料研究機構の一段式火薬銃を用いて出発試料に任意の衝撃圧力を加え、回収試料に対して岡山理科大学に設置されているSEM-CL装置を用いてCL測定を実施した。カリ長石の衝撃実験試料から特徴的なCL信号が得られ、波形分離解析により定量化した発光強度と衝撃圧力との検量線を得ることに成功した。これをもとに隕石に含まれるカリ長石の発光特性から衝撃圧力を評価するに至った。得られた値は先行研究と調和的であり、誤差はより少ない。またこれまで不可能であった微量の隕石試料に対しても圧力推定を適用することができた。今後は様々な隕石により普遍的に存在する斜長石を対象とした圧力推定法の確立を目指す。なお、本研究により得られた成果については国際学会誌ならびに国内外の学会にて発表した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Physics and Chemistry of Minerals
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